歯周病治療中の糖尿病患者 人工透析リスク3~4割減

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  • 2025年6月12日

 歯周病治療により、糖尿病患者の血糖コントロールが良くなることが知られている。東北大大学院歯学研究科(仙台市)の草間太郎講師らは、歯周病治療中の糖尿病患者の人工透析に至るリスクが治療していない人と比べ、3~4割低下することを明らかにした。

 ▽炎症の悪循環で悪化

 歯周病は、歯と歯茎の境目にたまった細菌の塊(プラーク)で炎症が起きることで発症する。「歯の周囲の血管から細菌や炎症物質が全身を巡り、糖尿病を発症、進行させると考えられます」と草間講師。

 一方、糖尿病患者にとっては「血糖値が高いことで炎症状態が強まったり、歯周囲の血管が傷ついたり、細菌への抵抗力が落ちたりして歯周病を発症、進行させます」。糖尿病の人が歯周病を持つ割合は約70%に及び、歯周病の人は糖尿病リスクが26%高いことなどが、過去の国際研究で発表されている。

 草間講師は「糖尿病患者に歯周病の治療を行うと、血液中の炎症物質が減少すること、血糖コントロールの指標であるヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)が低下するとの報告があります」。ただし、実際に歯周病治療が糖尿病合併症の予防になるかについては、明らかになっていなかった。

 ▽医科と歯科の連携を

 合併症の一つである慢性腎臓病が進むと、人工透析によって血液中の老廃物や余分な水分を取り除く必要が出てくる。

 草間講師らは、40~74歳の糖尿病患者約10万人の医療受診データを用い、歯周病治療での歯科受診の有無による人工透析に至るリスクを検討した。

 その結果、人工透析リスクは、歯科を受診していない人と比べ、歯周病治療で年に1回以上歯科を受診している人で32%、半年に1回以上の人で44%低いことが分かった。歯周病治療以外での歯科受診では、人工透析リスクの低下はわずかだった。

 「歯周病と糖尿病の関係は医療従事者を含め、多くの人に知ってもらう必要があります。また、医科と歯科が連携して糖尿病の治療に当たる仕組みをつくっていくことも望ましいです」と草間講師は話す。

 (メディカルトリビューン=時事)

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