登別市の水族館「登別マリンパークニクス」は14日までに、飼育している高齢のカリフォルニアアシカ「ベロ」(雄29歳)が4月に白内障と眼球摘出の手術を受け、視力を取り戻したと発表した。術後の回復は順調で、同館によると、高齢大型海獣への眼科手術は道内初とみられる。
ベロは推定1996年生まれ、体重186キロ。2001年に閉園した千葉県の水族館から引き受けた。飼育員と獣医で健康管理を続けてきたが、18年に白内障の進行が確認され、視認性の低下と強い疼痛(とうつう)により移動や摂餌が困難となっていた。特に24年以降は左右両眼とも水晶体の脱臼や炎症を起こし、点眼や投薬で治療をしていた。
手術には麻酔の安全性や施設間の搬送といったハードルがあったが、「最期まで豊かな生活を」(同園担当者)と同館、ひかり町動物眼科(江別市)、酪農学園大学付属動物医療センター(同)が連携。今年3月に搬出シミュレーションを重ね、4月10日に同センターで右眼の水晶体と失明していた左眼の眼球の摘出手術を行った。
術後約2週間の集中ケアを経て1カ月後には炎症も収まり、右眼でしっかりトレーナーの姿を追う様子が見られるようになった。今月からはバックヤードツアーで一般客を出迎えている。同園では今後、視力を生かせる行動環境の改善やより広いスペースでの飼育など、動物福祉の向上を目指した取り組みを進める。
同館を運営する北海道マリンパークの広報担当者は「この事例が高齢動物のケアに関する新たな知見となり、より良い飼育環境づくりに寄与することを願っている」としている。