戦争の記憶を後世に 河邑監督のトークも 映画「沖縄戦の図」上映

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  • 2025年6月17日
トークショーでマイクを握る河邑監督

 白老町若草町在住で沖縄県読谷村出身の元町地域おこし協力隊員、羽地夕夏さん(27)は15日、記録映画「丸木位里 丸木俊 沖縄戦の図 全14部」(河邑厚徳監督)の上映会を町本町のしらおい創造空間「蔵」で開いた。絵画の連作「沖縄戦の図」の制作過程などを追った道内初上映作品。2回上映し、町民ら計102人が鑑賞した。

 「沖縄戦の図」は「原爆の図」などで知られる画家、故丸木位里さん(1901~95年)と、空知管内秩父別町出身の妻俊さん(12~2000年)の連作。夫妻は沖縄戦の実相を「絵」として記録しようと地上戦体験者から話を聞き、戦禍を緻密に描き上げた。

 映画は、夫妻が6年をかけて完成させた連作14作品と、取材過程や証言を紹介するドキュメンタリー。沖縄では県民の4人に1人に当たる約12万人が戦時下に命を落としたとされ、戦後も米軍基地が集中して残されるなど、戦争の記憶が今に続いている現状を静かに問い掛けている。

 上映後のトークショーで、河邑監督は「沖縄は1945年、国内で唯一、地上戦を経験した場所。空襲や飢えの記憶は広く共有されているが、地上戦の苛烈さは十分に知られていない。丸木夫妻はそれを絵に刻むことで、後世に問いを残した」と語った。米軍上陸直後の集団自決やスパイ容疑での島民虐殺も証言を交えて重層的に記録しており「戦後80年を迎える今、日本は戦争しない国であり続けられるのか。その根源的な問いを、この映画で突き付けている」と述べた。

 羽地さんは「沖縄の佐喜真美術館で、『沖縄戦の図』に描かれた人々の表情に衝撃を受けた。自分も歴史の上に生かされていると実感した」と話した。

 最後は、参加者が沖縄戦を含むすべての戦争犠牲者に黙とうをささげた。

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