中国の頭骨化石はデニソワ人 たんぱく質抽出、アミノ酸解析で 古人類研究所 初めて形態明らかに

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  • 2025年6月19日
中国黒竜江省ハルビン市で見つかった少なくとも14万6000年前の頭骨化石。古脊椎動物古人類研究所がたんぱく質を抽出・解析し、デニソワ人と判明した(国際科学誌イノベーション提供)

 中国東北部で発見された少なくとも14万6000年前の頭骨化石からたんぱく質を抽出し、アミノ酸の配列を解析したところ、旧人のネアンデルタール人に近いデニソワ人と判明したと、中国科学院・古脊椎動物古人類研究所の研究チームが18日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。

 デニソワ人はこれまで小指や下顎などの骨、歯しか見つかっておらず、容姿が不明だったが、初めて頭骨の形態が明らかになった。成人男性とみられ、脳容量が現生人類や旧人並みに大きい一方、眉毛が生える部分の隆起が大きく、原人に近い特徴がある。ただ、デニソワ人はロシア南部(シベリア)からチベット、中国東北部、台湾にかけての広域に分布し、形態に多様性があった可能性がある。

 この頭骨化石は1933年に黒竜江省ハルビン市の橋の建設工事現場から発見され、2021年になって河北地質大などの研究チームが現生人類に近い新種「ホモ・ロンギ(竜人)」に分類したと国際科学誌イノベーションに発表した。しかし、この分類が妥当か議論になり、同研究所チームがたんぱく質を抽出してアミノ酸配列を解析した結果、デニソワ人特有の変異を見つけた。

 細胞核のDNAは抽出できなかったが、母から子に受け継がれる細胞小器官ミトコンドリアのDNAは歯石から抽出でき、デニソワ人と裏付けられた。こちらの結果は米科学誌セル電子版に掲載された。

 デニソワ人はドイツ・マックスプランク研究所のスバンテ・ペーボ博士らがロシア南部・デニソワ洞窟で見つかった小指の骨からミトコンドリアや細胞核のDNAを抽出し、10年に新たな人類と発表した。今年4月には日本の総合研究大学院大などの国際研究チームが、台湾沖で見つかり、原人の「澎湖(ほうこ)人」と呼ばれていた下顎骨化石は、たんぱく質を抽出して解析した結果、デニソワ人だと発表している。

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