苫小牧市美術博物館で29日まで開催中の特集展示「苫小牧ゆかりの書 市内所蔵品展」では、苫小牧と縁の深い書家8人が手掛けた全11点が紹介されている。
市内の学校、市文化交流センターなどの公共施設や企業から借りた作品が中心で、書の素人の私でも見慣れた作品があった。ただ、適切な照明が当てられた静かな空間で、学芸員の解説文の助けを借りながら改めて一作品ずつ鑑賞すると、より深く味わえた。
今回、最も多い3点(「天風吹我」「薫化童心」「幽」)を取り上げられていたのは桑原翠邦さん(1906~95)。帯広町(現・帯広市)出身で今上天皇をはじめ、皇族の書道教授を務めた大家だが、「旅の書家」と呼ばれて全国を巡り、書の普及にも尽力した。苫小牧市にも訪れており、市民会館の門柱の揮毫(きごう)も桑原さんの作品で「名誉なことだから」と市の依頼に応え、謝礼を受け取らなかった話も残る。
弟子で市内在住の書家大澤尚洋さん(79)は「分け隔て無く人と接し、気前もよかった。壮健な字を書く先生だった」と懐かしむ。展示以外に学校の校歌や校訓を書いた作品もあり「後進を思って引き受けていたと思う。紹介してもらってうれしかった」と喜んでいた。(河)