女性初の苫港「フォアマン」に 栗林運輸 トヨタシグナスFW・桜井芽愛

  • アイスホッケー, スポーツ
  • 2024年6月13日
栗林運輸のフォアマンとして荷の積み下ろしを管理する桜井=5月、苫小牧港
栗林運輸のフォアマンとして荷の積み下ろしを管理する桜井=5月、苫小牧港
冬季世界ユニバ女子アイスホッケーの準優勝を報告した桜井=昨年2月10日、同社
冬季世界ユニバ女子アイスホッケーの準優勝を報告した桜井=昨年2月10日、同社

 アイスホッケー女子トップクラブ一角のトヨタシグナスに所属する桜井芽愛==さくらい・めい=(22)が勤務している苫小牧栗林運輸(栗林秀光社長、元中野町)で同社の女性社員としては初めての職種「フォアマン」となり、大型船が出入りする苫小牧港の陣頭に立ち、貨物の積み下ろしを管理する日々の業務に精励中だ。

 桜井は生まれ育ちも苫小牧で、北星学園短大生活創造学科を卒業し、2022年4月に入社した。短大1年時の20年から同社のスポーツ選手支援事業「トマクリアスリートサポート」を受ける第1号となっていた。

 以前は現業部港運西事業所でフォアマンをサポートする事務方として業務に当たっていたが、今年2月から「フォアマン」に抜擢。「また一から仕事を覚えて、業務をたくさんこなせれば」と抱負を語る。

 港の職種の一つ、「本船係」とも呼ばれる「フォアマン」は荷を運ぶ定期・不定期船との間で入船前から作業計画を立て、作業員や必要な資機材を手配。入港後の船と岸壁を往復しながら指示を出し、事故なく効率的に荷の積み下ろし作業を進めるための重要な役割だ。同社によると女性がこの係に就くのは「苫小牧港を含む道内港湾でも珍しい事例」という。

 1万数千トン級のRORO船(フェリー型貨物船)が毎日入出港している苫小牧港。大型船の側にいる対応相手は主に1等航海士で、対面や携帯電話を用いるなどで必要情報をやりとりする。外国人船員の際には英会話が基本になる。

 岸壁ではヘルメットをかぶり、安全靴を着用して行う業務が板につきつつある。今、桜井は「周囲の方に助けていただいている。早く自立できるように頑張ります」。1日当たり1~2隻の船を受け持ち、役割を果たしている。

 父は元王子製紙チームFW、後に監督の邦彦さん、トヨタ元チームメートの乃愛(のあ)は姉。アイスホッケーで培った「度胸」は物おじしづらさや仕事上の判断力につなげている。上司の渡邊丈仁所長は「仕事のやり取りをする相手は圧倒的に男性ばかり。それをこなしながら、職場も明るくしてくれている」と働きぶりを評価する。

 同社の応援を受けている競技では昨年、準優勝の快挙を果たした世界ユニバーシアード女子日本代表の一員として活躍。所属するトヨタシグナスでは長くDFだったが、FWへの転換で新境地を開き、チームをけん引中だ。「アシスタントキャプテンを務めさせてもらい、選手間の指示出しなどで的確さが求められるので、今の業務とも通じるところがある」と桜井。「来シーズンは全日本選手権で優勝したい」と意気込んでいる。

 北日本随一の巨大港で働きつつ、社会人としてのたくましさが増している。

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