アイスホッケー・アジアリーグのレッドイーグルス北海道(REH)チームドクターの鈴木克憲医師(64)=整形外科内科沢口医院所属=らの研究チームが3月、英国の世界的な医学誌に、日本の男子プロアイスホッケー選手の10シーズン間の負傷率・傾向を分析した論文を発表した。選手が負った外傷の記録を基に研究し、仮に6人の選手が10試合出場すると7件の外傷が発生することなどを統計的に割り出し、対策として競技規則変更や用具の機能改善を提言する内容だ。
同月19日付で英文による論文を掲載したのは医学誌「BMJオープンスポーツ・アンド・エクササイズ・メディシン」。整形外科の鈴木医師は「苫小牧のチームで起きた事柄からスポーツ医療の情報を国際社会に発信できた」と手応えを語った。
同医師がチームドクターを務めたREH前身の王子イーグルスで2010~11年シーズンを起点に19~20年シーズンまででまとめた統計が論文の基礎でアジアリーグの試合と練習中に発生した外傷の事例から考察を記述する。10シーズン同じリーグの同一チームで専属医師が行った負傷事例研究は世界的にも珍しいという。
論文によると、同チームには10シーズンの間に計60人(フォワード37人、ディフェンス17人、ゴールキーパー6人)の選手が在籍し、451試合を行った中で治療を要する外傷が307件あり、練習中には172件の外傷が発生した。外傷の発生頻度なら、1人の選手が1000時間プレーすると115・3例の外傷が生じるリスクとして示された。
さらにチームの選手が負った外傷部位も詳述。上肢(手指、肩関節)が最多で、下肢(足関節、膝関節)、顔のけがが続いたと指摘。原因としてボディーチェックによるものが最も多く、次いでスティックやパックによる手指の骨折や顔の切創も見られた。
予防のための対策としては、ルール的には頭部を目掛けるなどの危険なボディーチェックを禁止することを提言。ヘルメットに取り付けるフェースマスクや手を守るグローブ内の緩衝材の改善など、向上すべき防具の機能を列挙した。
鈴木医師は「この競技の中で、どういうけがが多く、どのくらいの発生率を伴うかを明らかにできた」と言う。論文は極東多国間で行われてきたアジアリーグの概要も詳述していて、「世界にアイスホッケーのけがの予防策を考えてもらえる内容になった」と話している。