札幌国際大学・人文学部国際教養学科の1年生28人が11日、白老町を訪れ、民族共生象徴空間(ウポポイ)を見学し、アイヌ文様の刺しゅうを体験した。地域固有の資源を生かした観光振興を学ぶのが狙いで、多文化共生などに理解を深めた。
同大学の必修授業「2022基礎ゼミ2・白老フィールドワーク」の一環。同学科は現代文化学科を前身として昨年4月に新設された。授業を企画した同大の遊佐順和教授(54)は、20年ほど前から町と交流があり、学科新設後初となる今回の授業に引率者の一人として関わった。
学生たちは学芸員や考古調査士を目指しており、白老町には多文化共生の取り組みなどを学びに来た。ウポポイでは舞踊や国立アイヌ民族博物館を見学。白老町中央公民館では白老アイヌ協会副理事長の岡田育子さん(74)の話に耳を傾け、アイヌ文様の刺しゅうを体験した。
岡田さんは町内で刺しゅうサークル「フッチコラチ」を主宰。かつてはウポポイ開業の気運を高めようと、「みんなの心つなげる巨大パッチワークの会」の代表として、多文化共生をアピールするパッチワークの制作にも取り組んだ。インターネット上などで15センチ四方の布の提供を広く呼び掛け、国内外から寄せられたアイヌ文様刺しゅうの布を、同会の会員たちでつなぎ合わせて仕上げた。
異文化を尊重し合う多文化共生への思いを伝える取り組みとなり、学生たちもこの活動にならい、15センチ四方の布にモレウ(渦)などのアイヌ文様を縫い付ける体験を楽しんだ。
香港からの留学生、傅鈺婷(フ・ギョクテイ)さん(26)は「アイヌ文化は漫画などで知って興味があった。白老での学習を通して、学びたい気持ちが高まった」と笑顔。友善瑞葵(みずき)さん(21)は「失われかけた文化の復興に向けて団結して取り組む人たちの姿を白老で初めて見た。とても勉強になった」と話していた。
学生たちは今後、視察の感想などをリポートにまとめる予定。学生らを引率した人文学部長の武井昭也教授(67)は「白老は多文化共生について学べる絶好のフィールド。今後も交流を続けていきたい」と話していた。遊佐教授も「文化探求の入り口として現地の方との触れ合いを大事にしていきたい」と語っていた。