▽全力を出し切る
「やる気はあるか?」「覚悟はあるか?」「最高の運動会にしよう!」
6月11日、むかわ町宮戸小学校のグラウンドで子どもたちが気合の雄たけびを上げていた。それに大人たちが右手を上げて応戦する。「おー!」
朝方の強雨の影響が残るグラウンド。運動会は予定より30分遅れで始まった。児童たちは会場から大きな声援と拍手を受けながら、徒競走や運命走、2チームに分かれての玉入れ、全員リレーに挑み、力を存分に出し切った。
「これで最後になるのは寂しいけれど、本気で戦いたい」と意気込んだ6年生の山下祥弥君(11)も、全員リレーで力を振り絞った。昼時に強い雨に見舞われたが、何とか全種目を終え、先生たちはそれぞれに「頑張ったね」と声を掛けた。すると児童たちは満面の笑みを浮かべ、大きな達成感が伝わってきた。
▽住民参加型の運動会
宮戸小の運動会は「宮戸地区連合運動会」と銘打っており、児童だけでなく、老若男女問わず、幅広い地域住民が参加する。
競技は、保護者向け、幼児向けの徒競走や高齢者向けの玉入れなどバラエティーに富む。さらに児童と高齢者がスティックでボールのパス交換をしながらゴールを目指すレースなど、違う世代が一緒に取り組む競技も盛りだくさん。体格も体力も違う組み合わせが珍プレー、好プレーを繰り広げて会場を沸かせることもあり、町内会の大運動会を思わせる和気あいあいとした雰囲気の中で進行する。
同校のOBでもある今野一夫さん(75)は「最後になると思って参加した」という1人。「僕たちの頃は在校生が100人以上いて、もっと盛り上がっていた。自転車レースがあったりしてね。懐かしいな」としみじみ語り、今の場所に旧校舎が建って間もない頃を思い出していた。
▽地域全体で作り上げる
運営でも住民が一つになっている。会場は教職員と保護者、駆け付けた中高生が協力して設営し、アナウンスは児童たちが交代で担当した。種目が終わるごとに配られる景品のジュースやお菓子は、地元や近隣自治会からの寄贈で用意した。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一昨年は中止。昨年は児童と保護者のみの参加で行われたが、金澤堅一校長は「これが皆さんで集まれる最後の機会になる」と周囲に理解を求め、地域も参加する運動会を3年ぶりに復活させた。幼児から高齢者まで声を出し、体を動かして触れ合う運動会は、宮戸小にとって「地域の人と一緒に何かをやるために欠かせない」行事になっていたからだ。
最後の運動会を終え、5年生の磯部玄君(10)は「来年、(統合先の)鵡川中央小に行っても宮戸小でやってきたことを生かしたい」と思いを新たにする。宮戸の地で培ってきた経験は、新たな学びの場でもしっかりと引き継がれる。