白老町の仙台藩白老元陣屋資料館は今年度から、町指定無形民俗文化財「町伝統文化継承者」に関する企画展「白老町伝統文化継承者展」を、館内で年2回ペースで開催していく。”まちの匠(たくみ)”を知ってもらうのが狙いで、初回は町の馬産文化発展に多大な貢献を果たした相木久紀さん(81)=町社台213=を取り上げ、偉業を伝える資料を16日から5月8日まで公開する。
町教育委員会では長年にわたり町内の伝統文化を継承し、後継者育成に貢献してきた町民を、町指定無形民俗文化財「町伝統文化継承者」に指定している。アイヌの刺しゅうや虎杖浜地区に残る伝統の踊りの継承に貢献した23人で、資料館では企画展を通じ、それぞれの生き方や偉業を紹介していく。
相木さんを取り上げる初回は、道産馬の育成に用いられた馬具など約50点を初公開する。
同館によると、相木家の先祖は信濃国(長野県)で武田信玄に仕え、馬産を行っていた。道内に移住したのは相木さんの高祖父助太郎氏で、日本在来種の一つ、木曽馬数十頭を連れて江差(桧山管内江差町)に入った。助太郎氏の長男、利八氏は幕府の見回り方として八雲(渡島管内八雲町)から勇払(苫小牧市)まで巡り、その過程で白老に立ち寄ったという。
白老で暮らすようになったのは、利八氏の長男で相木さんの祖父に当たる林蔵氏。社台で漁師をしながら馬産も手掛け、道内各地で駄(だん)づけ(駄載運搬作業)や種づけをした。
相木さんの父林治さんの代で国鉄が普及し、相木家の馬産は一時途絶えたが、相木さんが51歳で馬産を再開。最盛期は107頭の飼育を1人で引き受けた。2005年には日本ポニー種と日本乗系種の2種が公益社団法人日本馬事協会に認められ、新種として登録された。北海道和種馬やポニーの保存に努める一方、白老ホース愛好会会長として人馬交流の輪を広げ続けており、白老の馬産文化発展に尽力している。
企画展初日の16日午前10時からは、同館常設展示室で「道産馬育成に馳(は)せたる思い」を演題とした講演会を開き、相木さんが熱い思いを語る。
入館料は一般300円、小中学生150円。町民は無料。問い合わせは同館 電話0144(85)2666。