交付金制度は19年5月施行のアイヌ施策推進法で創設。白老町は同年度から交付金を活用した事業に乗り出した。22年度は前年度並みの約1億7800万円の交付が見込まれており、町は一般財源も合わせた約2億2300万円の予算で事業を進める予定で、新年度一般会計予算案に関連事業費を計上した。
アイヌ関係団体が主体となった文化振興事業では、伝統工芸の自然素材育成や体験行事などイオル(伝統的な文化・生活の空間)再生事業を引き続き展開。手工芸の担い手育成、アイヌ文化の理解促進に向けた商品開発、アイヌ文様など知的財産を保護する体制づくりも進める。
地元アイヌ文化を後世につなぐため、古老からの聞き取り調査による記録保存も予定。長年にわたり町内でアイヌ語教室を開き、地域の口承文芸研究にも取り組む「白老 楽しく・やさしいアイヌ語教室」(大須賀るえ子主宰)の活動支援も新たに組み込んだ。
また、白老生活館(高砂町2)を取り壊し、新たな施設を建設する事業を本格的に進める予定。白老アイヌ文化の伝承と発信機能を持たせた多機能型生活館とし、施設の実施設計作りや現施設の解体工事を計画している。
この他、「ふるさと学習」として小中学校でのアイヌ文化体験学習を引き続き実施。伝統的食材を使ったアイヌ料理の給食も児童生徒に提供する。ウポポイへの誘客を促すプロモーション活動や、白老駅北観光商業ゾーンを会場に観光客へアイヌ文化や地元の食をアピールするイベントも展開。アイヌ文様を車体にラッピングした地域循環バスの運行、ウポポイ見学者など急病の観光客に対応するための救急医療体制整備も継続する。小中学校に学習支援員を配置し、児童生徒の学力向上の取り組みも続ける。
交付金は、市町村がアイヌ施策推進の地域計画を作成し、国の認定を受けた計画の事業に対して支給される。交付対象の事業については、国が費用の80%を負担する。
白老町は、国のアイヌ政策推進交付金を活用し、2022年度もアイヌ文化振興関連の事業を展開する計画だ。白老アイヌ文化の伝承拠点とする新生活館建設に向けた実施設計作り、伝統文化の担い手育成、民族共生象徴空間(ウポポイ)への誘客促進といった13事業を組み立てた。