白老町は、アイヌ施策基本方針を改定した。白老アイヌ文化の振興と伝承―など五つの重点施策を掲げ、事業を展開する。アイヌ民族を先住民族に位置付け、尊厳の回復をうたった新法の趣旨も反映した内容で、町議会への報告を経て今年から運用する。
新しい基本方針は、アイヌ関係団体や経済・観光団体の代表者、学識経験者らでつくる検討委員会(委員長・岡田路明北洋大客員教授)が26日、町役場で開いた会合で決定した。
基本方針は中長期的なアイヌ施策の方向性を示したもので、重点施策として▽アイヌ民族の歴史と文化を正しく認識し、尊重する社会の創造▽白老のアイヌ文化の振興と伝承▽アイヌ民族の歴史や文化に関する教育の振興▽産業の振興と生活環境の充実▽アイヌ民族に関する行政の総合的推進―の5本柱を設定。これに基づく施策の方向性や取り組むべき課題を示した。
歴史と文化の認識・尊重に関する施策では、アイヌ文化の魅力発信、民族共生象徴空間(ウポポイ)を核とした誘客プロモーション活動の促進、アイヌ文化振興に向けた人材育成といった現状の事業に加え、アイヌ民族と国外先住民族の交流促進、アイヌ文化関連資料・文献の蔵書整備(イランカラプテ文庫)なども盛り込んだ。
白老のアイヌ文化振興に関する施策では、伝統的生活空間(イオル)の再生、白老で受け継がれてきた儀礼の継承や研究への支援、刺しゅうや木彫といった伝統工芸の振興と担い手育成などを示した。また、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産に指定されている古式舞踊、アイヌ語・口承文芸の研究と保存の推進を盛った。
この他、小中学校や子育て支援団体との連携による体験学習推進、アイヌ文化の価値を高める商品開発の推進や知的財産管理体制の構築、伝承活動に生かす多機能型生活館の整備なども示した。
現行基本方針は2007年度に策定し、アイヌ文化の振興を図る事業を進めた。一方、アイヌ施策推進法の制定(19年度)やウポポイ開設(20年度)など政策的環境が変化。アイヌ民族を法的に先住民族に位置付け、尊厳回復や差別禁止もうたった新法の趣旨も現行の基本方針に反映されていないことから、町は見直しを図ることにした。