アイスホッケーアジアリーグのジャパンカップは27、28両日、白鳥王子アイスアリーナ=苫小牧市=などで最終4試合が行われた。すでに優勝を決めていた王子イーグルスは本拠地で横浜グリッツに連勝。戦績を20勝(4敗)の大台に乗せ、勝率8割3分3厘で全日程を終了した。2位の栃木日光アイスバックスは東北フリーブレイズとのアウェー戦に臨み1勝1敗だった。
今大会は新型コロナウイルスの影響で中止されたロシア、韓国のチームを含む通常のアジアリーグの代替として昨年10月に開幕。国内5チームが勝率によって順位を競ってきた。
28日
▽6回戦(白鳥王子アイスアリーナ)
王子イーグルス9―0横浜グリッツ
▽得点者【王】橋本(百目木、佐々木)高木(山下、レデンバック)芳賀(越後、小林)中島(佐々木、橋本)中島(高橋、橋本)三田村(レデンバック、山田)百目木(高橋、中島)ハリデー(高木、久慈)中島(橋本、佐々木)▽GK【王】成澤【横】小野、黒岩、小野▽シュート数【王】41【横】8▽反則【王】4分【横】6分▽パワープレー得点【王】2【横】0▽キルプレー得点【王】0【横】0▽観客数1189
王子が締めくくりの一戦で大勝。FW中島のハットトリックをはじめ、DF芳賀、ハリデーらもゴールを挙げて一方的に寄せ付けなかった。横浜は登録選手全員出場で奮戦するも、王子のラッシュを食い止められなかった。
▽同(フラット八戸)
東北フリーブレイズ3―2栃木日光アイスバックス
27日
▽5回戦(白鳥王子アイスアリーナ)
王子イーグルス5―2横浜グリッツ
▽得点者【王】中島(大澤、高橋)高木(大澤、久慈)百目木(中島、中屋敷)レデンバック(三田村、山下)柴田(越後、今)【横】平野、土屋(池田)▽GK【王】成澤【横】黒岩▽シュート数【王】43【横】9▽反則【王】10分【横】16分▽パワープレー得点【王】1【横】0▽キルプレー得点【王】0【横】0▽観客数1041
王子が中盤以降に本領発揮。同点で迎えた第2ピリオド5分すぎにFW高木のゴールで勝ち越すと、同8分すぎにFW百目木、3ピリにはFWレデンバック、柴田も続いた。横浜は試合開始19秒でFW平野が先制ゴールを挙げるも、その後は守る時間が長く苦戦した。
▽同(フラット八戸)
栃木日光アイスバックス3―2東北フリーブレイズ
チーム名 勝敗数 勝率
(1)王子イーグルス 20勝4敗 .833
(2)栃木日光アイスバックス 12勝10敗 .545
(3)ひがし北海道クレインズ 11勝11敗 .500
(4)東北フリーブレイズ 9勝13敗 .409
(5)横浜グリッツ 2勝16敗 .111
―歴史と伝統 胸にクラブ化へ
らしさは最後まで健在だった。実業団「王子」として挑む最後の公式戦となった28日は9得点と自慢の攻撃がさえ渡った他、今季4回目となる無失点試合を達成。氷都苫小牧で育んだ95年の歴史と伝統を、4月のクラブ化につなげる強い意志が表れたようだった。菅原監督は「選手たちが一戦一戦課題を持ちながらプレーした結果」とたたえた。
締めくくりの相手は、今季からアジアリーグに加盟した横浜。27日の5回戦は開始19秒で先制されひやりとさせられたが、終わってみれば2戦で14得点。FW、DF合わせて19人がアシストを含めたポイントを挙げるなど、選手層の厚さをまざまざと見せつけた。
施設管理者らの粋な計らいで28日の電光掲示板のチーム表記は「EAGLES」から「OJI」に変わり、会場は歴代の王子ユニホームを身に着けたファンで埋まった。菅原監督は「寂しさもあるが選手、スタッフは全員前を向いている。クラブ化は楽しみな気持ちの方が強い」と言う。
苫小牧出身のDF山下主将は「小さい頃から王子の赤いユニホームに憧れてきた。選手になって王子としての最後のリンクに立てたことは誇り。名は変わってもチームの伝統は引き継ぐ」と力強く語った。
―鉄壁の守護神リンク去る〔GKマッキンタイア〕
王子で2季プレーし、今季限りで現役引退を表明していたカナダ出身GKのドリュー・マッキンタイア(37)の引退セレモニーが27日、白鳥王子アイスアリーナで開かれた。
バックアップとしてベンチから戦況を見守っていたマッキンタイアは、試合後に会場のスクリーンに映し出された北米アイスホッケーリーグ(NHL)時代のプレー動画や、母国で帰りを待つ両親など家族から寄せられたビデオメッセージをリンク中央で見ていた。
「応援してくれたファンの皆さんや、一生懸命戦った仲間のおかげで最後の大会を優勝することができた」と目を潤ませながら通訳を介して感謝を伝え、最後は日本語で「ありがとうございます」と一礼した。
惜別の花束を手渡したGK成澤(33)は「すごい経歴の持ち主なのにいつも対等に接してくれた。人としてもプレーヤーとしても超えられなかった存在。引退してもドリューを常に意識しながら、日本を代表するキーパーになれるように努力したい」と語った。
マッキンタイアは2003年にNHL3部相当のイーストコースト・リーグ(ECHL)でプロデビューし、NHLでは計6試合に出場。ドイツなど欧州リーグでも活躍し、18年からは日本製紙クレインズ(現ひがし北海道)、王子と計3シーズン日本でプレーした。
― 歴代OBを招待、万感胸に試合見守る
名門、王子製紙アイスホッケー部メンバーに名を連ねた歴代OBがチームに招待され、27、28両日延べ約50人でホーム連戦を見守った。1970年入部の元DF長谷川滋さん(73)は横浜から駆け付けた。クラブ化後に期待を込めて「より広くファンの皆さんに知られ、応援されるチームになってもらいたい」と願っていた。
71年入部の元GK新谷和夫さん(68)も感慨深げに赤いユニホームを着た現代の顔触れが戦う試合を見詰めていた。「アイスホッケーは面白いスポーツ。夢を与えるようなプロチームに生まれ変わってもらえれば」と話した。76年にチーム入りした元DF若狭健次さん(65)は「時代の流れの中の変化。来季は日本勢がすべてプロでそろう。アジアリーグを盛り上げてもらいたい」。
80~90年代のヒーロー的存在で元FWの矢島敏幸さん(56)は「このユニホームは見納めになったけれど、クラブは積極的に魅力づくりに取り組んで、新しい歴史を切り開いてほしい」と語った。日本リーグに続き、今世紀のアジアリーグまで現役を貫いた元FW杉沢明人さん(53)は「『王子』の名がなくなる寂しさはある。でもチームは前を向いて苫小牧、北海道密着のスタイルを確立してくれれば」と期待を込めた。
―会場内で写真展も 本紙も「氷上の群像」出展
王子イーグルスのホーム最終戦では各種の記念イベントが繰り広げられた。アリーナの通路では27、28両日、苫小牧民報を含む新聞・専門誌4社協賛で初の写真展が行われ、約170点が壁に並んだ。
本紙は1960~2000年代に新聞掲載した王子製紙アイスホッケー部の写真を45点展示した。昔ながらのファンが懐かしそうに眺める様子が見られた。
空知管内栗山町の小林正さん(75)は半世紀にわたって応援を続けてきた王子ファン。「王子―岩倉が対決していた頃から苫小牧に毎年来ていました。王子スケートセンターの木製のベンチに座った観戦を思い出しますね」と語った。