中 赤に自然への畏敬の念想起

ニナルカ遺跡出土 顔料付き土器

  赤は古くからヒトが好んだ色です。太古より世界各地で装飾品や洞窟壁画、土器や衣服の彩色などに用いられています。血液の赤に連想される死と再生、魔よけとしての赤、警戒色、果実の成熟、太陽や火など、人間の英知では及ばない自然への畏敬の念を想起させる色です。

   赤はベンガラや赤色漆、黒曜石、チャート、コハクなどからもたらされています。特にベンガラは墓にまいたり、土器に塗ったりとさまざまに用いられています。

   市内の静川地区のニナルカ遺跡から見つかった縄文時代早期(約7千年前)の土器は、当時使用していた際に上から下まで割れてひびが入り、そのひびに沿ってベンガラが塗られています。顔料が塗られている土器としてはかなり古いものであり、かつ割れたひびに顔料が塗られているという珍しいものです。顔料を土器の表面に定着させた最初期の資料に当たるかと考えられます。

   ちなみになぜひびの部分にベンガラを塗ったのかは分かっていません。ひびの修復のためか、ここが割れていることを示すためか、はたまた別の意味があったのか。ぜひ資料からその意味を考えてみてください。このほか、ベンガラは漆に混ぜて赤色漆の顔料にも用いられています。

   (苫小牧市美術博物館学芸員 岩波連)

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