アイスホッケー・アジアリーグに今季から参入した横浜グリッツ。王子イーグルスなど国内5チームの参加で10月に開幕したジャパンカップから登場し、まだ勝利こそないものの実戦を重ねるごとに見応えある試合を展開し、道内外のアイスホッケーファンを沸かせている。仕事と競技を両立する「デュアルキャリア」を掲げ、船出した新進気鋭のチーム。臼井亮人代表(40)に参入の手応えと、チームのこれからを尋ねた。
(北畠授)
―ジャパンカップ10戦を終えての感想は。
まだ1勝もできていないが、少しずつ戦力が整い、毎試合ステップアップしていると思う。特に10月下旬に北米リーグ(NHL)でプレー経験を持つマイク・ケネディヘッドコーチが合流して選手たちの戦術理解度がぐんと向上した。伸びしろを感じさせている。
今年からアジアリーグに参入して、本拠地の横浜市はもちろん、敵地でも競技ファンの方々が非常に温かく迎えてくれたことに驚いた。「リーグに入ってきてくれてありがとう」や、チームのことが掲載された新聞記事を手に「こんなのが出てたよ」など、たくさん声を掛けてもらっている。本当にありがたい。
―仕事と競技を両立するデュアルキャリアを掲げている。
スポーツ界は、現役を終えた選手の第二の人生に当たるセカンドキャリアへの移行が課題。挫折した人や、将来に不安を感じてアジアリーガーになりたがらない大学生のアイスホッケー選手をたくさん見てきた。これでは日本の競技力は上がらないと感じ、仕事と競技を両立できる環境をつくろうと考えた。
選手たちが仕事に従事する各企業の関係者が、アイスホッケーに興味を持つようになり、競技の裾野が広がったのは大きな成果。一方で週末に試合を行い、翌月曜日からは仕事という日程が選手にとって想像以上にハードなことが分かった。企業理解を深めてもらうのはもちろん、チームとしても体調管理などサポートを一層充実させていく。
―来季以降はどのように戦力発掘をしていくか。
デュアルキャリアに興味を持つ現役の大学生選手は多くなっている。トライアウトの実施など、首都圏に拠点を置く強みを生かしながら、仕事と競技の両立ができる選手を獲得していく。
現在在籍の選手たちは、アジアリーグや海外でのプレー経験が豊富なのはもちろん、各企業で社会人としても評価されている。デュアルキャリアの基盤をつくる初期メンバーの姿が、来季以降の新戦力に連綿と受け継がれていき、働きながらトップリーグでプレーするのは当たり前なんだということを浸透させたい。
―ジャパンカップは年内日程はすでに折り返しに入った。
早く初勝利を挙げて、そこからファンの方々にどんどん勝利を届けられるように頑張りたい。新型コロナの影響で日本全体が沈みがち。これから冬本番を迎える。ウインタースポーツの一つ、アイスホッケーから日本を盛り上げていきたい。
臼井亮人(うすい・あきひと)
GRITSスポーツイノベーターズ(横浜市)代表。札幌市生まれで小学2年生からアイスホッケーに親しんだ。中学3年時に苫小牧に移住し、進学した苫小牧東高、慶応大でアイスホッケー部の主将。現在はIT系の会社を経営しながら、トップリーグの一角に加わったチームの運営に奔走している。