道が新型コロナウイルスの警戒ステージを引き上げ、胆振管内でも感染が広がる中、苫小牧市内の高齢者施設が入所者とその家族との面会や外出、外泊対応などで難しい判断を迫られている。厚生労働省は10月、地域の感染状況に応じ、面会制限の緩和を認めたが、道内は感染者が急増しており「面会を求める声に応えたいが、流行が落ち着かず緩和できない状況」と厳しい表情を浮かべている。
苫小牧澄川病院内の老人保健施設苫小牧健樹園では、運営法人の延山会(本部札幌市)が、感染予防対策や指導、院内感染の監視、調査、研究などを審議する院内感染予防対策委員会を設置。同委員会を毎月開いて状況に合わせた対策をし、全施設で基本的な感染対応を統一している。
コロナが流行する前は毎日面会に訪れる家族もいたが、2月末から5月中旬にかけては感染リスクを回避するため面会を全面禁止。その後、時間や人数の制限、完全予約制の導入など感染状況を見ながら柔軟に対応を進めてきたが、感染者が急増する現在は重篤者への面会を除き、再び禁止している。外出や外泊はコロナを持ち込ませないために制限せざるを得ないという。
同施設総合相談センターの太田由子センター長は「年末年始の外出を検討中だが、感染者を出すリスクを高める可能性がある現状を見ると非常に難しい」と対応に苦慮する。
市内元中野町の特別養護老人ホーム陽だまりの樹も一時再開した面会について、道内の感染拡大が見られた8月下旬から再び中止。今月下旬からはリモート面会を導入する予定だ。
入所者に混乱はないが、「家族の面会が途切れたことで、認知症の入所者が不安になることもあった」という。通院が必要なケースで投薬のみなら家族に受け取りを依頼するなど、外部との接触を極力避けているほか、敬老会などホールに集まって行う行事も中止や縮小した。
宮川直樹施設長は「コロナの収束はまだ先。行事などを楽しみにしている入所者もいるので、さまざまな情報、対策を参考にしながら形を変えて計画したい」と語る。
市内松風町のケアハウス恵みの里は、平均介護度が1で80代の入所者が中心。施設内には二酸化炭素濃度の数値を示すモニターを設置して換気に気を配る。4月以降、面会は正面入り口の自動ドアを隔て、携帯電話で会話する「ドア越し面会」を実施。6月からは予約制のオンライン面会も導入し、家族と利用者をつないでいる。外出制限はしていないが、最小限にするよう呼び掛け。外出時は訪問先などの詳細を確認しているという。
田中敏郎施設長は「入所者には不便をかけるが、感染症を持ち込まないよう最大限の対策をしている。流行している間は現在の対応を続けるが、管内の感染者数が落ち着いてきたら施設内で対面の面会ができるよう対応したい」と話した。