《2》 東胆振唯一の感染症指定医療機関 最前線に立ち続ける苫小牧市立病院

  • 検証コロナ禍 医療編, 特集
  • 2020年11月18日
東胆振で唯一感染症病床がある苫小牧市立病院

  「基本的に道の要請に基づき判断するが、今のところ12から増やす動きはない」―。東胆振唯一の感染症指定医療機関、苫小牧市立病院の佐々木薫事務部長はそう説明する。同病院は現在1病棟46床を休止し、新型コロナウイルス感染症病床12床を確保している。道が道内全体の「ベッドコントロール」で患者の受け入れ先を振り分けるため、胆振管内で感染者が急増しても、直ちに病床は逼迫(ひっぱく)しない仕組みだ。

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   市立病院は胆振管内初の感染者が確認された2月下旬以降、コロナ対策の最前線に立ち続けている。東胆振の基幹病院として重要な役割を担いながら、「感染症病棟」を設けて患者を受け入れ。診療の一部を制限しながら増床するなど、対応に追われてきた。

   感染症病床は個室4床でスタートしたが2月下旬だけで市内感染者は5人に達し、すぐ満床になった。東胆振の患者が札幌や室蘭に運ばれるケースもある一方、石狩管内から患者を受け入れたこともあった。4月27日には感染症病床12床、集中治療室(ICU)1床に強化した。

   初期は2病棟を休止して対応したが、佐々木事務部長は「2病棟すべてに患者を入れるという意味ではなく、休んだ2病棟のマンパワーを(コロナ対策に)充てる必要があった」と説明。国が示す感染症患者の退院基準が紆余(うよ)曲折したことも大きな負担だった。

   患者の退院基準は法に基づくが、厚生労働省は当初「科学的知見」を踏まえ「37・5度以上の発熱が24時間ない」「呼吸器症状が改善傾向」「48時間後にPCR検査で陰性を確認し、12時間以後に再度の陰性が確認された場合」という厳しい要件を課していた。

   市立病院は6月上旬までに入院患者18人を受け入れたが、入院するとなかなか退院できない国の基準はハードルが高かった。現在はPCR検査なしで退院できる基準が「発症から10日経過し、かつ症状が改善して72時間過ぎた場合」と見直されたが、入院の受け入れが少ないにもかかわらず切迫しかねない状況にあった。

   これらの課題解決により「第1波」「第2波」の時に比べ、早期の退院が可能に。9月の4連休(19~22日)以降、胆振管内でも若い世代の感染が目立つが「回転率」の高さで医療態勢が維持されてきた側面もある。中等症や重症の患者が急増すれば、一気に逼迫は現実味を帯びる。

   道は感染症病床963床、無症状・軽症者向けの宿泊療養施設も1000人分を確保し、入院患者を全道に振り分けているが、16日時点で病床使用数は686床と行き詰まりつつある。感染者が急増する札幌市が「自宅療養」を取り入れるなど、極めて厳しい局面が続いている。

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