胆振管内の2企業で、相次いで発生した新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)。道などによると、両社とも職場でのコロナ対策を徹底してきたが、感染が休憩所など共用スペースで広がった可能性がある。誰もがいつ、どこでも感染する可能性が改めて浮き彫りとなり、苫小牧保健所など関係機関は市民や事業所などに「人ごとと思わずコロナ対策をいま一度徹底してほしい」と呼び掛ける。
道などによると、管内初のクラスターが発生したアイシン北海道では9月24日から10月8日にわたり、従業員6人の陽性が判明した。全従業員のPCR検査を進めているが、クラスター認定された8日までに、濃厚接触者は検査を終えて自宅待機している。15日時点で、同社から新たな感染者は確認されていない。
管内2例目のクラスター事例となった清掃事業所は8~14日に従業員6人が感染。8日に従業員1人の陽性が判明し、濃厚接触者19人を検査したところ、14日までに5人の感染が確認された。いずれも事務部門の従業員で、不特定多数と接する機会が多い清掃部門は別フロアーにあり、道は「事業所外に感染が広がる可能性は低い」とする。
両企業ともマスク着用や手指消毒、従業員の健康状態確認などコロナ対策を徹底しており、現場で従業員が「密」になる環境にはなかったという。感染は休憩所や喫煙所、トイレなどの共用スペースで広まった可能性があり、道は消毒の頻度を高めるなどの対策を指導した。
苫小牧保健所は「コロナ対策は浸透してきた」としながら「共用場所を消毒していても、そこで感染が広がった可能性があれば、『1時間に1回消毒を』などとさらに求める」と説明。健康状態の確認を自己申告によらず非接触型の体温計を取り入れたり、喫煙スペースも屋外に移したりするなど、さらなる対策の強化もアドバイスする。
一方、インターネット交流サイト(SNS)の一部では、個人を特定しようとしたり、うわさを拡大したりする動きがあり、患者本人や家族、関係者などに精神的な苦痛を与えている。市は5日に先手を打つ形で、市長メッセージを発信しており、「SNSでの拡散などは慎んで」と訴える。
市危機管理室は「誰もがいつ、どこでも感染する可能性があるのがコロナ。感染した誰かが悪いわけではない」と指摘。東胆振唯一の感染症指定医療機関である市立病院(専用病床数12床)は逼迫(ひっぱく)した状況にはなく、「感染を拡大させないためにも、3密(密閉、密集、密接)回避やマスク着用、換気など自分たちができる基本的な対策を徹底することが大事」と冷静な対応を求めている。