苫小牧市内の複数の企業や団体が先週、関係者の新型コロナウイルス感染を公表したことを受け、市にも詳細な情報提供を求める市民からの問い合わせが相次いでいる。企業などが個人情報に配慮した上で自主的に感染を発表したが、感染者との調整役である道が公表基準に沿って非公表とした部分が多いためだ。ただ市としては感染者の居住地や行動歴などを独自の判断で明かせず、3日の記者会見でも説明に苦慮する場面が見られた。公開する情報次第では感染者が誹謗(ひぼう)中傷に遭う懸念もあり、人権に配慮しながら感染予防を徹底させる難しい対応が続く。
市内では7月30日のトヨタ自動車北海道を皮切りに同31日にダイナックス、8月1日に出光興産北海道製油所、苫小牧地区サッカー協会が相次ぎ感染者の発生を発表。一方、道は7月30日から8月1日にかけて各企業、団体の公表との関連に触れない形で、胆振管内在住の計4人の感染者確認を発表した。
企業・団体側は社会的責任を果たすため、従業員らのコロナ感染を公表する姿勢。トヨタ北海道は「できる範囲で正しく情報を出している」と説明し、出光北海道も「協力会社の作業員が(定期補修工事の)シャットダウンメンテナンス(SDM)の関連作業終了後に感染したが、製油所として公表することにした。安心、安全にSDMが終わるよう努める」と述べた。
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「苫小牧でも感染者が出たんでしょう」―。トヨタ北海道が従業員のコロナ感染を公表した7月30日以降、市には詳細を尋ねる電話が3日まで10件余り寄せられた。
この間、道が確認した胆振管内の感染者4人についてはプライバシーに配慮して居住する自治体名はもちろん、1人を除いて年代も非公表。行動歴などは調査中とした。このため、市は「本人の意向もあり、市内在住者の感染か否かも明らかになっておらず、説明できることは限られる」(危機管理室)と理解を求める。
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3日の記者会見でも、詳細な情報開示を求められた際、岩倉博文市長は「保健所、各企業とも連携し、情報共有は100%やっているが、すべて公表できるわけではない」と強調。感染者や所属企業、団体への誹謗中傷や憶測、うわさのSNS(インターネット交流サイト)での拡散に強い懸念を示しながら「全国的に感染が拡大している状況下にあってはどこで感染したかということではなく、常に自分の身を自分で守る行動を取ることが重要」と訴えた。
その上で、不特定多数に感染リスクが及ぶ場合は、市としても感染場所などについて可能な限りの情報公開を道に要請していく考えを表明。法に基づく感染者情報公表の限界も認め、「コロナの収束後にはこのことについて、しっかり改善すべきことは改善すべきと思っている」と語った。