新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、苫小牧市内の小中学校は2学期以降、修学旅行を道内1泊2日で実施する。市教育委員会の通知に基づく措置で、中学校はこれまでの道外2泊3日から、日程の短縮と行き先の変更が余儀なくされる。小学校は例年通りの内容になりそうだが、小中いずれも日程は後送りする。各学校で対応に追われているが、教諭や生徒たちは実施できることを前向きに捉え、準備を進めている。
(高野玲央奈)
道教育委員会は修学旅行の行き先を道内、移動を陸路に限定するなど対策を求めた。市教委はこの方針に沿って1日、修学旅行を道内1泊2日にするよう小中学校に通知。一方で、道教委は旅行先の例示に白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)を挙げたが、市教委は隣町という近さを敬遠し、行き先は各校の判断に委ねた。
中学校の当初計画は、春に2泊3日の日程で関東や東北を訪れる内容だった。緑陵中学校は5月20~22日、青森県で農業体験のファームステイと岩手県で中尊寺の見学などを考えていた。市教委通知を踏まえて9月29、30日、後志管内留寿都村での川下り体験と、小樽市内での自主研修などの内容に変えた。
荒川歩校長は「生徒たちに思い出づくりはさせてあげられる。充実感や満足感を持って受験に向かってもらいたい」と強調。旅行先の変更に伴うキャンセル料は発生せず、日程短縮で旅費も軽減される見通しだが、新たな旅行計画を作る企画料など旅行業者への経費が発生するため、「保護者の負担にならないよう市教委に要望している」と説明する。
勇払中学校も当初は4月21~23日に青森県に飛行機で移動し、ファームステイなどを考えていた。通知を受けて日程を9月17、18日に延期、短縮した上、行き先は帯広地方にする予定で、3年生を担任する椙尾直美教諭(46)は「自分たちで計画を立て、やり遂げる達成感を持たせたい」と意気込む。
コロナの影響で学校行事の延期、中止が相次いでいたため、3年生の國廣伍柊(いっしゅう)さん(14)は「修学旅行があるのか心配していた。本当は道外に行きたかったけれど、行けるなら道内でもうれしい」と喜ぶ。三好里奈さん(15)は「飛行機に乗りたかった」と本音を漏らしつつ「あまり市外に出たことがないから、道内でも新鮮に見られそう」と話す。
小学校は当初計画から行き先が函館で、多くは変更がないとみられる。苫小牧西小学校は日程を約2カ月後送りの11月4、5日にする予定で、土井嘉啓校長は「行き先の函館はそのままだが、『密』を避けるよう部屋数やバスの台数の変更はしなければならない」と考えている。
バスの追加借り上げが各校で計画されるなど、密閉、密集、密接の「3密」を避け、安全に配慮した上で、子どもたちの心に残る旅ができるよう心を砕く。
市教委の五十嵐充教育長は「場所や日程が変わっても、修学旅行が果たす役割は変わらず、社会勉強を行ってほしい。道内のことをより知る機会になれば」と期待している。