高校アイスホッケーの頂点を決める第74回全国選手権大会(インターハイ)が20日、苫小牧市で開幕する。地元開催は2015年の第64回大会以来10大会ぶり。その大会は駒大苫小牧が埼玉栄を5―0で破り、29回目の優勝を果たしている。レッドイーグルス北海道で、駒大苫小牧に所属していたFW入倉大雅(28)、DF今勇輔(26)、埼玉栄に所属していたDFハリデー慈英(28)の3人に当時の思いや試合を振り返ってもらった。
-駒大苫小牧 入倉大雅、今勇輔
2014年度、全道大会では10大会ぶりに決勝進出を逃したが、インターハイでは持ち前の勝負強さを発揮した。前回大会の成績により、1回戦から登場した駒大苫は準々決勝で武修館と激突。3点を先行されるも追い付き、延長戦で勝利した。準決勝も白樺学園との激戦を制し決勝へ。勢いそのままに29回目の全国制覇を成し遂げた。
入倉は「地元開催、全校応援で観客席が盛り上がる中、優勝できてうれしかったし、いい思い出になった」と回顧。インターハイまでの大会では、あまり良い結果を出せずにいたが「最後だし、吹っ切って優勝しよう―と開き直って挑めた」とほほ笑む。
今は1年生ながらにファーストラインに名を連ね、入倉と同じセットでプレーをした。3点の先行を許した準々決勝について「いずれの失点にも絡んでいて、焦りや負い目を感じ、悔しさがこみ上げた」と思い返す。「雰囲気もほかの大会とは、やはり違う。諦めず3年生が得点を挙げてくれて、すごいな―と感じていた」と先輩の偉大さを実感したという。入倉はこの試合で「諦めずにプレーすれば、追い付いて戦える―と感じた思いは今でも心に残っている」と語る。
強豪との激戦を勝ち抜き、迎えた決勝戦。主将の立場から入倉は「後悔しないよう、全力を出し切って優勝しよう」とチームメートを鼓舞した。応援の後押しもあり、埼玉栄に5―0と快勝。「決まった瞬間、号泣した。それまで結果が出なかった分、うれしさがこみ上げた。3年間、つらい練習に耐えてきたことが報われたと感じた」と振り返る。
2人は今大会の出場選手に「後悔せず、全て出し切れるよう、頑張ってほしい」(今)、「ここで優勝するために、どのチームも取り組んできたと思う。その成果を発揮してもらいたい」(入倉)とそれぞれ激励の言葉を送った。
-埼玉栄 ハリデー慈英
埼玉栄はこの年、準決勝で八工大一を延長戦の末破り、18大会ぶりに決勝へ駒を進めた。初優勝まであと一つ。立ちはだかったのは王者・駒大苫小牧だった。「今でもよく覚えている」と、主将を務めていたハリデー。「ここまで来たからには、最後勝って終わろう―とチームで気持ちを一つにした。プレーでも引っ張っていこうという意識を持っていたが、歯が立たなかった」と振り返る。
駒大苫の生徒が大勢詰めかけ、大きな声援を送る完全アウェーの中で戦った。力のある学校がそろっていたシーズン。チャレンジャー精神で臨み、駒大苫には夏の練習試合で2勝1敗と勝ち越していた。「正直、ほかの学校と当たるより得意意識はあったが、いざ戦うと大敗。翻弄(ほんろう)されて1点も奪えず、悔しい思いをした」と話す。
試合終了後、両チームであいさつを交わした後、主将として相手チームの監督などにあいさつへ行くのが定例だったが「それすら忘れてしまうほどで、人生の中でもトップ3に入るくらい悔しかった。『無』というか、やられた―という感情」と思い返す。
インターハイを経て、時間帯によるプレーの選択など、大舞台での戦い方を身に付けたハリデー。経験を踏まえ「ここまで自分の感情が揺さぶられるような体験ができたのは、自分の中でいい経験となった。アイスホッケーが好きじゃなければ、ここまで悔しい気持ちにならなかった。苦い経験があるからこそ、今でも優勝にこだわる気持ちは強い」と語る。
大会に臨む高校生に向け「楽しむ気持ちを忘れず、思う存分、自分の力出し切ってほしい。優勝はもちろん素晴らしい経験になると思うが、負けたとしても先の人生で、いい経験だった―と思える。100%の気持ちでプレーしてほしい」とエールを送る。