2 出光興産北海道製油所 原(はら) 英之(ひでゆき)所長 CN実現へ重要な年 安定操業で責任果たす

  • 企業トップに聞く 2025, 特集
  • 2025年1月10日
出光興産北海道製油所 原英之所長

   ―昨年を振り返って。

   「6月に着任し、4年に1度のメジャーSDM(シャットダウンメンテナンス=大規模定期補修工事)が始まるタイミングで、印象に残った。前回(2020年)は新型コロナで工事量を抑え、(一部)工事を先延ばしした影響で、今回は大規模で期間も長くなったが、多くの方の協力で無事、工程通りにできた。社内では生産性向上に取り組み、既存事業の業務効率化を図っており、SDMに関わる業務も例外ではない。従来より少ない人員でメジャーSDMができた」

   ―今年の見通しは。

   「25年度はカーボンニュートラル(CN、温室効果ガスの排出ゼロ)に向けた取り組みを実現するため重要な年。23年度は(二酸化炭素=CO2=を分離、回収、貯留する)CCSの実現可能性調査(FS)を実施し、24年度は設備の設計に着手した。設計自体は25年度も実施する予定で、設備の構成や具体的な装置の規模を決めていく」

   「もう一つの大きなプロジェクトが、グリーン水素サプライチェーン(供給網)構築。24年度はFSをし、コンソーシアム(企業連合)のメンバーと議論しながら、西部工業地区のグリーン水素製造と利活用の絵姿が出来てきた」

   「出光独自で取り組もうとしている合成燃料(e―フューエル、グリーン水素とCO2から合成する石油代替燃料)の製造に向けた検討も進めている。製造プラントでどういう技術を採用するか、設備の能力や何を製造するかなど、基本的な仕様を固める年になる」

   ―それぞれのプロジェクトが進展する。

   「26年度中に最終的な投資をコンソーシアムの皆さんと協力して判断し、建設に入る想定をしているが、プラント建設で労務単価が大きくなることや、(人手不足などで工事が)そもそも受けてもらえない懸念がある。CN関係の大規模投資になるため、政府からの長期支援など制度が確立しないと判断できないが、両方の条件を満たせば投資を判断することになる。恐らく制度が具体化するのも25年度で、その両面で重要な年だと思う」

   ―25年度は3カ年の中期経営計画の最終年度。

   「われわれが取り組もうとしている30年に向けた通過点。石油製品の安全安定供給やCNなど、新規事業を立ち上げていくことが、この3年間の大きな方針だった。しっかり実現することで、出光が今の基盤の事業をしっかり支え、新しいことにも取り組んでいることを示していきたい」

   「安全・安定操業することで、道内唯一の製油所としての供給責任を果たし、さらにCNをやり遂げていきたい。もう一つは製油所で働く社員がやりがいを感じて、自分たちの仕事に誇りを持って取り組める職場にしていくこと。操業に関わる協力会社の皆さんと連携し、より良い製油所にしていきたい」

   ―昨年からエネルギー消費量を実質ゼロにするZEB化も進めている。

   「プロダクションセンター(PC、集中制御室)の空調を効率化して消費電力を下げ、ソーラーカーポートで発電した電力を併用し、ゼロエミッションを達成するもので、順調に進めている。エネルギーのマネジメント、負荷変動を調整するシステムのノウハウ、知見を得たい」

   「環境省の脱炭素先行地域に採択された市と近隣企業の提案で、PPA(電力販売契約)太陽光発電パネルを設置し、その電力を近隣の企業で使用し、余った場合は一般家庭に供給するスキームを検討している。より大規模な太陽光の電力を、製油所で利用する計画につなげていきたい」

  メモ 北海道や東北、北陸地方まで石油製品を供給する道内唯一の製油所。エネルギー供給事業者で在り続けるため、脱炭素化の取り組みも積極的に進める。

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