突然ではありますが、鳥類の胃は何個あるかご存じでしょうか。
つい先日、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターのボランティアさんから質問を受けたこともあり、今回は鳥類の胃について紹介したいと思います。
そもそも、胃が複数ある生きものがいることを知らない方もいらっしゃるかもしれませんが、その代表的な生きものといえば、牛や羊やヤギのような反すう動物(草食動物の中で、食物繊維の消化を助けるために、胃の中の物をふたたび口に戻してかみ砕き、また飲み込む「反すう」をする動物)が挙げられ、四つの胃が存在します。また、同じ反すう動物でも、ラクダやアルパカは三つの胃が存在します。
では鳥類の胃は何個なのか。正解は「二つ」です。
鳥類は、歯を持っていないため、ついばんだ食べ物は丸のみします。そのため、そのままの形状で食べ物は胃に送り込まれるのですが、この時に重要な働きをするのが、二つの胃です。
一つ目の胃は「前胃(ぜんい)」「腺胃(せんい)」と呼ばれ、運ばれてくる食べ物に消化液を分泌し、その後の消化を助けます。その後、「後胃(こうい)」「筋胃(きんい)」ともよばれる二つ目の胃へ。この胃は「砂肝」として知られている部位で、焼き鳥屋さんなどで食べたことのある方はお分かりだと思いますが、かなり筋肉が発達しています。
また、胃の内側はやすりのような構造になっており(種によっては胃の中にグリットとよばれる砂や小石を蓄えていることも)、筋肉質の胃の収縮運動とともに、食べ物を砕くのに役立っています。そして、丸のみされた食べ物は無事に細かな形状となり小腸へと運ばれ、さらなる消化を経て、栄養が吸収されていくのです。
歯を持たずとも、役割を分担し、食べ物を消化するために働く二つの胃を持つ鳥類。鳥類の豆知識として、皆さんも、どなたかにお話してみませんか。
(ウトナイ湖野生鳥獣保護センター・山田智子獣医師)