新型コロナウイルスで新たな生活様式が求められる中、ライブハウスは再開後も対応に苦慮している。政府が示した「夜の街」感染防止ガイドライン(指針)では、出演者の原則マスク着用や客の会話、大声を控えるよう促すが、ライブはステージと聴衆の一体感が最大の魅力。新たな形態のライブをどう形作っていくか、苫小牧の音楽関係者は複雑な心境を抱いている。
西村康稔経済再生相が13日に公表したガイドラインは、キャバレーなどの接待を伴う飲食店、ナイトクラブ、ライブハウスの3業種が対象。共通しているのは、対人距離を2メートル(最低1メートル)離すことや、客および従業員のマスク着用、利用客の連絡先記録などだ。
この指針について、王子町のライブハウス「エルキューブ」を運営するリブライフの杉村原生社長(42)は不安を隠さない。14日に行った2カ月ぶりの有人ライブは、観客同士の距離を十分に取った。ギターの弾き語りが「会場の雰囲気と奇跡的にかみ合った」と、ライブの良さを失わずに公演できたことに胸をなで下ろすが、音楽ジャンルは多種多様。密を避けるための入場抑制が客離れを招いたり、売り上げが落ち込んだりする可能性があるという。
過去にクラスター(感染者集団)が発生したことでライブハウスが「危険視」されることについて、関係者の一人は「感染防止対策が必要なのは理解できるが、密が起きやすい場所は他にもたくさんある。国の指針はちぐはぐだ」と不満を漏らす。
表町のライブバー「エムズガーデン」は19日の音楽ライブで、換気や客同士の距離の確保、検温、消毒など「新北海道スタイル」を実践した。店主の曽我義之さん(51)は「お客さんが安心して楽しめる場をどう作っていくかだ」と、これからの新たな形を模索する。