災害時の新型コロナウイルス対策が問われる中、苫小牧市は避難所運営マニュアルに感染症対策を反映させる方針だ。避難所は典型的な密閉、密集、密接の「3密」空間だが、既存マニュアルでは未想定で、マスクや消毒液を備蓄していなかった。道がこのほど運営マニュアルを見直しており、市危機管理室も「基本的な考え方を取り入れる」としている。
避難所運営マニュアルは地域住民らが自助、共助の視点で避難所運営を進めるための手引き。市の指定避難所での3日間以上の運営を想定しているが、同室は「新型コロナのような感染症は念頭に置いていなかった」と言う。
これまでもインフルエンザの患者受け入れなどは想定。医療機関との連携や要支援者への配慮などを掲げ、職員向けのマニュアルでもうがいや手洗いの励行を求めてきたが、「『3密』を避ける観点は盛り込まれていなかった」と説明する。
全国的にもほぼ同じ傾向が見られる中、道は2018年9月の胆振東部地震を教訓に進めてきた避難所運営マニュアルの改訂に急きょ、コロナ対策を反映させた。
避難所の衛生管理や間隔の確保をはじめ、災害時の避難行動としてマスク、消毒液、体温計の持参を呼び掛ける内容。自宅療養など既存避難所以外の避難先確保も検討することなどを盛り込み、5月に各市町村に通知した。
市はこれらの基本的な考え方をマニュアルに取り入れる方針。同地震を教訓に3月、マニュアルを改訂したばかりだが適宜追加することは可能という。
担当者は「災害リスクや課題と常に向き合い、対策を講じるのは当然」と強調。「マニュアルの全面改訂とはいかないが、国が提唱する新しい生活様式や3密回避など、コロナとどう向き合うかについて基本的な考えを取り入れたい」と語る。
仮に今、災害が発生した場合にも「避難所は3密を避ける運営になる」と指摘。避難所で使う間仕切りは、現行計画で防災備蓄倉庫に確保済みだが、指定避難所となる各学校の体育館で実際、収容人数を減らさず避難者同士の距離を保つには「避難者を校内で分けるなどの協力をお願いすることになる」と話す。
従来、マスクや消毒液は市民用に確保していなかったが、今年度の一般会計補正予算に備蓄用のマスク5万枚、消毒液1200本の購入費を計上した。
「それぞれの部署が防災力の底上げを図る機会になっており、得られた経験をマニュアルに生かしていく」と担当者。「新型コロナが落ち着いたら、どのように避難すればよいかといったことも出前講座などで示していきたい」としている。