日中に飲食店でカラオケを楽しむ「昼カラオケ」で、新型コロナウイルスの感染が広がっている。札幌市内では2店の喫茶店でクラスター(感染者集団)が発生した。苫小牧市内でも複数のスナックなど飲食店が昼カラオケを営業している。これまで感染者は出ていないが、各店とも消毒などの感染対策を進める一方、入店を常連客に限定するなど細心の注意を払っている。
昼カラオケは正午ごろから3、4時間営業する形態が一般的。軽食やコーヒー、お茶など(アルコール除く)が付いて1人1000~1500円でカラオケを利用できることから、シニア層を中心に人気が高い。市内では中心部以外の住宅街に近いスナックや居酒屋に多く、住民同士の交流の場にもなっている。
音羽町2の「みゅうじっくじゅん」では、正午から午後4時まで営業。50席ほどある店内は入店客を最大15人に制限し、3カ所の換気扇はフル稼働。座席も1人分を空けて座ってもらうなど「密」を防いでいる。
入店時の手指消毒をはじめ、歌い終わるたびにマイクを消毒液をつけたタオルで拭き取る。「顔見知りが多いのでお互いに配慮している。体調が良くないときは来店を控えてもらっている」と成田淳子代表(56)は話す。
感染防止対策は多くの店で取り入れており、大成町1のカラオケサロン雅も常連客に限定。店主の澁谷雅人さん(71)は「1人暮らしの年配者が多いので交流できる場が必要」と言う。新型コロナの流行で「店もお客さまも大変。外出できる場所がないとストレスもたまる」とし、感染防止策を講じながら客を迎えている。
同店を利用している男性客(67)は自己防衛で携帯式のスプレー消毒液を持参。「どこから感染するのか分からないだけに、他の店にはいかないようにしている」と語った。
見山町3のカラオケサロンカスタネットも30席ほどあるが、昼カラの時間帯はソーシャルディスタンス(社会的距離)を確保するため入店を5人程度に制限。消毒も徹底しているが、10日は来店がゼロだった。オーナーの西口博孝さん(75)は札幌のクラスター報道の影響を懸念しつつ、「常連さんがいるのでそれほど心配はしていない。しっかり対策しながら歌好きのお客さんを迎えたい」と話した。
一方で、不安を抱えながら営業する店もある。市内で長年、昼カラを営業している飲食店の男性は「正直に言えば店側も感染が怖い。でも自分の生活もある。だからこそ入店は信頼できる常連さんだけに限定せざるを得ない」と本音を打ち明ける。
札幌市は、昼カラでのクラスター発生を踏まえ、歌う際のマスク着用や店内の十分な換気、マイクやリモコンの小まめな消毒などを要請。道も同様の呼び掛けを行う方向で調整中としている。