白老町のアイヌ文化復興拠点、民族共生象徴空間(ウポポイ)で9日、新型コロナウイルスの感染対策を徹底しながら町民向け内覧会が始まった。密閉、密集、密接の「3密」防止をはじめ、入り口にサーモグラフィーを設け、展示や体験プログラムを変えるなど、入場者の安心・安全確保に配慮。コロナの影響で開業が延期されてきただけに、対策に万全を期しながら公開の実績をつくることで、ウポポイ開業への機運を高める。
ウポポイのコロナ感染症対策は、国が示す基本的対処方針に基づき、管理運営するアイヌ民族文化財団が実施。国立アイヌ民族博物館の対策は、日本博物館協会の予防ガイドラインに沿うなど、感染予防を徹底して町民らを迎えた。14日まで予定している内覧会の入場者数も、平日は最大300人、土・日曜は同1000人に抑え、グループ行動も50人までとした。
入り口に人の体表温度を計測するサーモグラフィーを設置し、体温が37・5度以上の場合は入場禁止に。入場者にマスク着用を求め、各施設の入り口などに消毒液入りのボトルを置いて手指消毒を促した。入館者同士の距離を屋内は2メートル、屋外は1メートルそれぞれ空け、行列や大人数の滞留ができないよう、啓発物も壁や床などあちこちに掲示している。
アイヌ文化を身近に感じる展示や体験も、感染リスクを踏まえて入館者が触れないようにした。例えばアイヌ民族の漁具マレクやサケの皮で作った靴など、本来であれば触感などを確かめられた展示品も、間仕切りを設けて触れないことを強調。タッチパネル画面も操作できないようにし、画面上の解説などを自動再生に。音声解説用機器の貸し出しも中止した。
初日は屋外で戸田安彦町長らがアイヌ古式舞踊を鑑賞したが、本来は体験交流ホールで開催するプログラム。アイヌ伝統の輪踊りなどは観客の一部が参加できる演出も計画しているが、この日はベンチに1人ずつ座って見学のみに。工房も体験を行わず見学にとどめ、入場者数も制限なしから、木彫は9人、刺しゅうは16人に絞るなど、各所でコロナ対策を徹底した。
また、展示ケースは間近で見られるよう配慮しつつ、同財団がコロナ対策で約30人を投入し、入場者の移動をスムーズに誘導するなど、ソフト面の対策も強化して臨んだ。国と同財団は対策をさらに検証し、今後のコロナ情勢の推移を踏まえた上、開業後のコロナ対策も正式に決める予定で、同財団は「国と調整しながら感染防止に努めたい」と強調している。