東京五輪の新種目として採用され、脚光を浴びるスケートボード。日本人選手のメダル獲得が有力視されている。2020年の苫小牧には、国内や世界のトップを競う大会で活躍する競技者層を含め、若年ライダーが数多くいて、米国発祥の「横乗りスポーツ」が広がりを見せつつある。最近の動向を探った。
ジャンプ、空中動作、回転などトリック(技)の出来栄えを採点するスケートボードの競技には2種目がある。巨大なサラダボウルを思わせるくぼみが連なった「パーク」と、ボックスや手すりを模したレールなどの設備を使う「ストリート」だ。
競技者には、延期となった東京大会からオリンピックという最高の舞台が用意されることになり、国内では日本屈指のライダーたちが、男女各3人の出場枠を争っている。
空前の代表レースに小学生ながら苫小牧の開心那(ひらきここな)が参戦中。開は昨年5月、新潟県で開かれた日本選手権パーク女子を制覇。世界ランキング9位につけて、東京五輪日本代表の有力候補の一角に急成長した。
高校生プロとして国外遠征を重ねている冨川蒼太(苫小牧西高3年)は「魅せるスケボー」で世界と勝負する。すでに大手スポーツ用品ブランドなどからスポンサー契約を獲得した競技者。昨年11月に本場米国のフロリダ州タンパで開かれた世界規模の大会で5位に食い込み、勇名をはせた。「今年もタンパの大会に出場して優勝したい」と話す。
16年からは毎夏渡米し、自分のトリックなどをまとめた映像作品の制作に励んできた。近年はスケートボードの裾野の広がりを実感していて、「認知度が高まって公共のスケートパークが多くなった」と語り、五輪開催を挟んでからは「これからもっと、選手を取り巻く環境が良くなっていくのでは」とみている。
山口翔生(ウトナイ小6年)は、今年プロテストが開催されれば、日本スケートボード協会公認のプロ資格を得る可能性が高い。昨年のプロテストの大会、全日本選手権では10位。8位までが合格で、あと一歩だった。「反省を生かして、次は全トリックを成功させて上位を狙いたい」と意気込む。弟の零生(同2年)も全道クラスの大会で準優勝するなど、翔生の背中を追い掛ける。翔生は「兄弟でプロになるのが目標」と話す。
山口兄弟は、苫小牧市有明町のサーフショップ「ブレイズ」(西村千秋代表)内の設備や自宅にあるハーフパイプ状の「ランプ」でほぼ毎日練習に励む。翔生は「技の成功率とレパートリーを増やしていきたい。五輪も目標の一つなので、出場できるように日々の練習を頑張りたい」と話した。
指導する西村代表は「『横乗り』の一つであるスケートボードは、遊びの文化として発展してきたが、近年はスポーツとして認知されるようになった」と話す。「開や冨川の活躍は、高みを目指して頑張っている選手の希望。山口もプロになるのは確実だが、そこがゴールではない。世界に通用する実力を付けてほしい」と期待を込めた。
=3回連載=