北海道教育委員会が初めて実施した道立高校校長庁内公募により、鵡川高校の校長に就任した三村素道氏(54)。むかわ町の資源をフル活用し、これまで以上に地域に根差した学校づくりを掲げており、その手腕が注目される。3年ぶりに同校へ復帰した新校長に今後の取り組み、意気込みなどを聞いた。
―鵡川高校を選んだ理由について。
自分のビジョンがはっきりしていた方が非常にやりやすく、早く取り組むことができる。以前赴任した時に「むかわ学」や(生徒の特性や能力に応じた)「チャレンジスタディー」の土台を作った。実施状況を確認し、充実させていきたい。むかわ学は課題解決型の学習。地域をキャンパスとして資源、恐竜ワールド構想をフルに活用したい。
―3年ぶりに戻ってきてみて。
懐かしく思ったのは校歌を聞いた時。改めて「戻ってきたんだな」と。生徒が当時と比べて少ないとは感じている。
―同校の長所、魅力について。
恐竜やシシャモといった特産物など町に教育資源がたくさんあって、子どもがそれを学ぶことができるのが魅力。地域創生やSDGs(国連が掲げる持続可能な開発目標)の視点から迫っていくことができる。中学校でもむかわ学を導入しており、中、高の6年間を通じて地域の課題をいかにして解決していくか。卒業して他の地域に行っても、違う課題がある。課題を見つけ、チームで解決していく学びを展開していくことで資質が身に付くと思っている。
―具体的な取り組みは。
地域の企業などと連携したデュアルシステムを実践したい。2~3日ではなく、1、2カ月に及ぶ長期のインターンシップ(職業体験)を行うことでミスマッチを防ぐことにつながるし、企業にも地域貢献というインセンティブがあるはず。また、むかわ町には学習塾がない。放課後学習センターを設立し、地元で小中高生が学べる環境をつくっていけたらと、道と町の教育委員会と進めている。インターネットを整備するほか、必要なプログラムを検討し、先生がいなくても学べる状況をつくりたい。まなび館や野球部寮の一角をスペースとして考えている。世代間の交流が生まれ、やりたいことが実感できる取り組みになれば。
―当面、実践していくことは何でしょう。
昨年度は43人中25人が就職した。地元の商工会を通して共同体を構成しながら、学校をつくっていくことを考えている。地域と学校をつなぐコーディネーターを入れることも進めているところ。まだ完全な姿ではないが、夏頃には原型をつくって広げていきたい。学校が地域に開かれ、子どもたちがいかに関わっていくかが育てる上で大切なこと。知識を教えるだけの時代はもう終わった。自ら、あるいはチームで課題を見つけて解決していく。それをやっていかなければ、今の子どもたちがこの先を生きていくものは身に付かない。(胆振東部地震からの)復興も学びのチャンス。あれだけの打撃があった中で、どう立ち上がっていくのかに携わることは大きな学びのチャンスだし、これからに生かしていくべきことだ。
―改めて目標を。
まずは本校を存続させていくこと。地域に学校があるとないとでは経済に大きな差がある。子どもたちが課題と思ったことを追究し、楽しみながら社会的な効果に結び付けていければ。最終的にこのモデルプランを先生方が自走できる形にしていきたい。野球部についても地域の期待に応えられる存在になれば。子どもが地域に関わり、成長していけるような、学校もそういう存在でありたい。
道立高校校長庁内公募 道立高校改革の一環として、道教育委員会が初めて導入した人事制度。新たな時代に対応した教育が求められ、「道立高校の魅力化」「地域と連携したキャリア教育の実践」「働き方改革の新たな取り組み・実践」といった特色のある高校づくりに意欲のある校長を募り、高校改革を強力に進める。応募者が具体的な提案内容やプレゼンテーションを行い、道教委が選考。今年度は三村校長以外に3人が同様の制度で内定している。
三村素道(みむら・もとみち) 函館市出身。函館ラ・サール高、成城大学を経て上川管内の鷹栖高で教員生活をスタート。2015年から2年間、鵡川高で教頭を務め、札幌西陵高副校長、札幌国際情報高副校長を歴任。この春、鵡川高に校長として着任した。