新型コロナウイルスの感染拡大で、登別市の登別温泉や白老町の虎杖浜温泉も深刻なダメージを受けている。2月以降の訪日外国人など観光客の激減で宿泊施設はどこも青息吐息。国内有数の温泉地・登別温泉ではホテルの休業も相次ぐ。北海道を含め全国に拡大した政府の緊急事態宣言で客足はさらに遠のき、ホテルや土産店からも悲鳴が上がる。
■売り上げ激減の土産店
国内での感染者増加を受けて政府が全国に緊急事態宣言を出した翌日の17日、登別温泉街に人影はなく、ひっそりと静まりかえっていた。シャッターを下ろし、張り紙で当面の休業を知らせる飲食店や土産物店、ドラッグストアなどが目に付く。長く続く宿泊需要の落ち込みで一部ホテルも営業を休止し、以前のにぎわいは消えていた。
温泉街の老舗土産店「貴泉堂」店主の吉田光雄さんは、17日分の売り上げを記録したレジの伝票を取り出し、こう嘆いた。「きょうの売り上げはゼロ。ひどいもんですよ」。客の主流を占めていた外国人観光客が2月以降、大幅に減少し、店の売り上げも大きく落ち込む状況が続いているという。「新型コロナ感染が落ち着くまで我慢するしかない」とため息をついた。
別の土産店は、3月の売り上げが前年同月の8割減、4月に入ってからは9割減と極端な減り方になり、「このままでは登別温泉は駄目になってしまう。行政の支援が必要だ」と訴えた。
■ホテルの休業相次ぐ
宿泊需要を下支えした外国人観光客の激減でホテルへの打撃は甚大だ。外出自粛を求める政府の緊急事態宣言が厳しい経営に追い打ちを掛け、感染拡大防止を理由に主要ホテルが19日以降、次々と臨時休業に入った。「旅亭花ゆら」は19日から5月末まで、老舗の「第一滝本館」と「ホテルまほろば」は20日から5月6日まで、「登別グランドホテル」は26日から5月末まで一時営業を停止する。第一滝本館は自社のホームページに「160年を超える当館の歴史の中でこのような営業自粛は戦時中も経験がなく、苦渋の選択」と記した。
登別市観光経済部によると、登別温泉の年間宿泊者数120万人の3割以上が台湾や韓国、中国など外国人観光客。特に1~4月は訪日の割合が半数と高くなる。それだけに外国人観光客の激減の影響は大きく、「新型コロナ問題が長引けばダメージも増していく」と懸念する。
■白老のホテルも悲鳴
白老町虎杖浜・竹浦地区の虎杖浜温泉のホテルも同様に深刻だ。国道36号付近で営業する温泉ホテルのマネジャーは「宿泊客の半数を占める観光バス運転手の利用が2月から落ち込み、3月はゼロ。今月も厳しい」と顔をしかめた。新型コロナの影響で外国人観光客による観光バス需要が皆無の状況に陥ったことが響いているという。
パート従業員を休ませたり、食材の仕入れコストを抑えたりして経営維持の努力を続けているものの、「いつまでこんな状況が続くのだろうか」と頭を抱える。
別のホテルの支配人も「3月の売り上げは例年の3~4割ダウンし、4月は半分以下。ゴールデンウイークの宿泊予約キャンセルも出ている。温泉日帰り客も大幅に減っており、回復の見通しがまったく立たない」と憂え、新型コロナの早期終息を願うばかりだ。
ホテルへの食材納入業者も影響を受け、虎杖浜で水産物を扱う事業所は「ホテルからの注文が無くなった」と現状を明かした。白老町内などの水産物加工業者15社でつくる胆振水産加工業協同組合は「今後の状況を注視していきたい」と話した。