厚真町と畜産業や肉製品の製造・加工、販売などを手掛ける合同会社「GOOD GOOD(グッドグッド)」=本社大阪市=が、町内高丘地区にある大規模開発跡地に係る土地賃貸契約を結んだ。双方ともに雇用の創出や観光資源の拡大、地元関係機関への波及効果、2018年9月に発生した胆振東部地震からの復旧・復興加速にもつなげたい考えだ。
■大規模開発跡地
高丘地区の大規模開発跡地は以前、別の事業者が約203ヘクタールの土地を活用し、27ホールのゴルフ場を造成して開業する予定だった。しかし、02年に資金難を理由に道半ばで撤退。9ホールは完成していたが、残り18ホールは粗造成状態のまま残され、その後、町が用地を取得したスポーツメーカーから12年に土地の寄付を受け、経過観察を行ってきたが、実態は荒れ地がほぼ放置されたままの状態だった。そんな土地に目を付けたのが、土作りから食肉の生産、食事までを一貫して提案する「和牛メゾン」を行うグッドグッドだった。
■和牛メゾン事業
同社は、放牧や牧草による和牛の繁殖・肥育事業を行い、自社で経営する店舗での料理提供、販売などを熊本県の阿蘇市で展開。道内で同様の事業構想を計画して土地を探していたところ、空港からの距離も近く、放牧に必要な敷地も確保できる高丘地区が目に留まった。胆振東部地震後も「リゾート産業の跡地と自然災害の遺産を掛け合わせれば、大きなものになるのでは」と考え、町や自治会、農業関係者らと交渉。宮坂尚市朗町長は「ゴルフ場跡地として残された場所を元通りの森に戻すのは難しかった。跡地を自然と調和させ、付加価値を高めてもらえるのでは」と述べた。
同社の野々宮秀樹社長自身も1995年に阪神淡路大震災で被災した経験を持つ。「生活復旧が最優先でその先のことを見通すことができない状況だった」と当時を振り返り、「その時に外部の人が入ってきて見直すことで産業基盤を構築する機運が高まり、復興が進んだ」と説明。今後の展開としては年内に土壌調査などを開始し来年、再来年に畜舎、厩舎(きゅうしゃ)の建築を進める。その後は試験的に牛を肥育し、最終的には200頭ほどに拡大。乗馬、企業研修の受け入れ、食事を提供するなど構想を膨らませる。
■地元への波及効果
新たな事業が始まることで関係者との連携や雇用の拡大、和牛ブランドの価値創出などが、プラスの要素として地域に還元されることが望まれる。
野々宮社長は「今まではベクトルが白老町や平取町などに向かっていたが、和牛を厚真で生産することで人の流入を高めることができるのでは。単に雇用を生むだけではなく、厚真に畜産文化を根付かせたい」と意気込む。宮坂町長も「新たな挑戦者が事業をもたらすことで町にもある程度の刺激を与えてくれるのでは。被災者はまだ心の傷を抱えたままだが、復旧から復興というフェーズにおいて夢を実現してほしい」と期待を込めた。