3月まで厚真町の起業型地域おこし協力隊員だった佐藤稔さん(40)がこのほど、厚真や近隣の食材、観光地など地域の資源を全国、海外へ発信、拡販する「TREASURE TRADING(トレジャー・トレーディング)合同会社」を立ち上げ、法人営業をスタートした。胆振東部地震で被災した際には避難所生活も経験し、その間、多くの人に支援を受けた。その思いから「仕事を通して、助けてもらった人たちに恩返しをしたい」と語る。
神奈川県鎌倉市出身で、2017年4月に町の起業型地域おこし協力隊として家族と共に移住。国内外の顧客を相手にプラモデルやおもちゃ、ワーゲンバス、キャンピングカーの貸し出しや輸出入などの業務をこなしてきた。
仕事が少しずつ軌道に乗ってきた18年9月に胆振東部地震が発生。事務所を併設した自宅は基礎が崩れるなど全壊被害を受けた。家の中はガラスの破片が散乱し、「靴がなければ入れないほど」に。家が崖の下にあったことから危険区域になり、約3カ月の避難所生活を強いられ、仕事もできない状態だった。
ただこの間、多くの町民に親切にしてもらい、助けてもらった。身の安全を確保しようと神奈川の実家に一時避難させた子どもたちも「厚真に帰りたい」と1週間もしないうちに戻ってきたという。
震災後は復興イベントやジンギスカン肉、米、野菜といった地元の食材の需要が増えるなど仕事が増え、昨年は各方面に足を運んで地元の食材をアピールしてきた。その過程で2月下旬に合同会社を正式発足させ、3月から営業をスタート。現在は京町の仮設店舗に事務所を構えて活動している。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で営業は見合わせているが、終息が見えてきた時にはキャンピングカーを扱う取り組みも計画しており、「町外から人を連れて来られるようなことができれば」と構想を練っている。
仮設住宅での生活が続くが、これまで住んでいた場所の近くで自宅を再建させる考えだ。佐藤さんは「厚真のおいしいものが取引先で評価され、知ってもらうことが地域への恩返しになると思う。こっちでしか分からないきれいなものも紹介して、泊まってもらえるようなことも考えていきたい」と話す。
また「震災の時に助けてもらった人たちへの恩返しとして、町民に少しでも還元できれば」と、現在は次亜塩素酸水を無償で提供するサービスも実施(事前の連絡が必要)している。問い合わせは同社 電話0145(29)7002。