アイヌ文化復興拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)の4月24日開業を1カ月後に控え、地元白老町の官民がウポポイを地域振興に生かす準備に急いでいる。来町する観光客の増加を見据え、事業所などは土産品作りを本格化。町はアイヌ文化のまちをアピールするため、伝統文様を車体に施したバスを町内で走らせる体制を整えた。一方、感染拡大の新型コロナウイルスが開業への盛り上がりに水を差し、期待と不安が入り交じる空気もまちに漂う。
■土産品作り急ピッチ
年間来館者100万人を目標に掲げるウポポイの経済効果を取り込むため、町内の団体や事業所は観光客向けの商品作りを急ピッチで進めている。障害者支援施設の社会福祉法人白老宏友会・愛泉園=竹浦=は、2月から施設内で作業を始めた。
作っている商品はアイヌ文様と北海道に生息する動物を組み合わせたデザインを施したトートバッグ、Tシャツ、缶バッジ、タンブラーの4品。昨年導入したデザイン印刷機などを使い、施設利用者が毎日、商品作りに当たっている。製造した品は、系列施設のポプリがウポポイに開設するスイーツ店で販売するほか、駅北観光商業ゾーンの観光インフォメーションセンターにも置く。製作を指導する施設職員丸山貴俊さん(49)は「ウポポイや白老の観光振興に関わることが施設利用者の励みになれば」と期待する。
白老観光商業協同組合に所属する協業民芸=東町=と、陶芸・藍染め工房の亜細亜=日の出町=も新商品を開発。日本手拭いや革製品のポーチ、銀細工アクセサリーなどアイヌ文様デザインの商品を販売する計画で、亜細亜代表の盛悦子さん(73)は「まちをアピールしたい」と意気込む。この他、水産加工品などの事業所やハンドメード雑貨の作家、白老アイヌ協会など各方面でさまざまな商品の開発や製造に取り組み、文化芸術活動の関係者らがウポポイで販売するアイヌ伝統楽器のムックリ作りも進む。
■商店街の魅力向上へ
ウポポイに訪れた観光客に足を運んでもらうため、白老商業振興会(久保田修一理事長)は大町商店街の魅力向上に挑む。アイヌ文様デザインで店の業種が一目で分かる看板を4月、会員29店と賛助会員の計33カ所に取り付けるほか、ウポポイPRキャラクター「トゥレッポん」を描いた屋外バナーを近く大町商店街通りに飾る。商店街マップも作る予定で、久保田理事長は「ウポポイを商業活性化につなげたい」と言う。
町外からも地域振興を応援したいという動きが出てきた。白老に縁のある苫小牧市在住で市文化団体協議会役員の小林充さん(76)が中心となり、町内外の手工芸作家などをメンバーにした「ウポポイ応援団」を今月立ち上げた。大町商店街に訪れる観光客が休憩でき、アイヌ文化をイメージしたハンドメード商品も買い求められる場をつくる構想を抱き、小林さんは「白老を元気にしたい」と意気込む。
■開業に不安感
町もウポポイ開業を機に、”アイヌ文化のまち”をアピールする取り組みを進める。車体にアイヌ文様をデザインした住民利用の予約制デマンドバス4台を今春から走らせる計画だ。開業に合わせて運行する町内観光の循環バス2台にも、同様のデザインを施すという。
しかし、官民が準備に熱を入れながらも、機運はいまひとつ盛り上がらない。国内で新型ウイルス感染が続く中、予定通りオープンできるかという心配が消えないからだ。町は開業と連動し駅北観光商業ゾーンで行うロングランイベントの縮小を検討するなど、先が読めない状況に頭を悩ませる関係者は多い。