東京五輪の聖火リレーが26日いよいよスタートする中、新型コロナウイルスの流行の終息と大会開催を願う聖火ランナーが白老町にいる。6月14日に同町で聖火トーチを手に走る自衛隊員の山本宏さん(59)=同町川沿=。世界的な新型ウイルスの感染拡大で開催を危ぶむ声が上がっているが、「復興五輪を理念とする大会が中止にならなければ」と祈っている。
白老町出身の山本さんは旧アイヌ民族博物館に勤務した後、民間企業を経て1996年に陸上自衛隊島松駐屯地(恵庭)に入隊。2001年から白老駐屯地の設備保守部門で働いている。東京五輪の聖火リレーが白老でも行われることを知り、昨年、大会組織委員会によるランナー募集に応募。「ふるさと白老での民族共生象徴空間(ウポポイ)誕生を祝い、アイヌ文化を世界に発信する思いで走りたい」という志望動機が選考者の目に留まり、ランナーに選ばれた。
聖火リレーに向けて昨年来、持病を抱えながらもウオーキングや腹筋など室内トレーニングで体を鍛え、200メートル区間を走る準備を進めた。昨年、母親を亡くしたことから、天国の母に聖火ランナーとなった自分の姿を見てほしい―との思いも込めてトレーニングを重ねてきた。
しかし、新型コロナウイルス感染が世界中に拡大。WHO(世界保健機関)が今月、パンデミック(世界的大流行)を宣言するなど7月24日開幕の五輪に暗雲が立ちこめた。山本さんは「中止や延期が取り沙汰されるニュースに目が離せない毎日を送っている」と話す。
ギリシャで採火された聖火は20日、特別輸送機で宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地に到着。56年ぶりに日本へやって来た聖火を映すテレビのニュース番組にくぎ付けとなり、「大会が無事に開かれることを願わずにいられなかった」と言う。
東日本大震災被災地での聖火展示イベントを経て、26日に福島県から聖火リレーが始まる。だが、国際オリンピック委員会(IOC)は22日に臨時理事会を開き、新型ウイルス感染者が広がる状況を踏まえ、東京五輪について延期を含めて検討すると発表。大会組織委員会や東京都などとの協議で今後4週間以内に結論を出す方針を示した。
各国の競技団体からも延期を求める声が上がる中、山本さんは「世界中の人々が楽しみにしている平和の祭典を中止にしてほしくない」と切望し、「願わくば予定通りに実施してほしいが、ウイルス流行が続くようであれば、秋か来年に延期してでも開催を」とIOCの判断を注視。広がり続けるウイルス感染の早期終息を心から望んでいる。