4月の民族共生象徴空間(ウポポイ)開業を前に、白老観光商業協同組合に所属する協業民芸(壬生龍之介社長)と、陶芸・藍染め工房の亜細亜(盛悦子代表)が観光客向けの新商品を開発した。商品はアイヌ文様をデザインした革製品や布製品、銀細工など豊富に取りそろえ、町内の観光インフォメーションセンターなどで販売する。白老に根差し、もの作りを通じてアイヌ文化を発信してきた両者は「まちをアピールしたい」と意気込んでいる。
同組合は、町内の民芸品店などで1972年に発足し、ポロトコタンで民芸会館ミンタラを運営。木彫り熊など民芸品を扱う店が並んだ会館は、白老アイヌ文化の発信拠点として観光客の人気を呼んだ。だが、アイヌ民族博物館を構えたポロトコタンが国のウポポイ整備地となったため、会館は取り壊しとなり、その後の仮設店舗も2017年に営業を終了。組合員の脱退も相次ぎ、現在は協業民芸と亜細亜が中心となって組合を続けている。
修学旅行生などにアイヌ文化の体験プログラムも提供している両者は、ウポポイ来館者に地元白老をアピールしたいと商品開発を模索。亜細亜は町内外のハンドメード作家にも協力を呼び掛け、アイヌ文様を施した革製品のキーホルダーやがま口、銀細工のアクセサリー、文様の刺しゅう入り布製品のトートバッグやタペストリーなど約30種を取りそろえた。
協業民芸は、アイヌ文様と「SHIRAOI(白老)」の文字、ポロトコタンのシンボルだった「コタンコロクル」像のデザインを組み合わせた日本手拭いを作った。
商品の中で革製品はいずれもカラフルな仕上がりで、がま口にアイヌ民族の若い女性をデザインしたかわいらしい品物も。アイヌ文様を施した銀細工の耳飾りも目を引く。日本手拭いは外国人観光客からも人気が出そうだ。
今後、各商品の価格などを検討し、4月から駅北観光商業ゾーンで白老観光協会が運営する観光インフォメーションセンターなどで販売する予定。協業民芸(東町2)と亜細亜(日の出町1)でも取り扱う。
高度成長期をはじめ長く白老観光を支えた組合の民芸品店は、観光ブームの下火に伴って次々に廃業。木彫りなどもの作りの職人もめっきりと少なくなった。白老観光商業協同組合も一時50人以上の組合員を数えたが、今では3組合員に減った。そうした中で組合の専務理事を務める亜細亜の盛悦子さん(73)は、ウポポイ誕生を好機として捉え、「もう一度、白老のもの作りを盛り上げたい」と言う。協業民芸を切り盛りする石山篤子さん(69)と斉藤孝延さん(41)も「地元の文化発信を意識して活動したい」と意欲を見せる。