新型コロナウイルス感染拡大の影響で国内経済が打撃を受ける中、白老町の事業所も深刻な事態に悲鳴を上げている。飲食店には予約のキャンセルが相次ぎ、宿泊客が前年比8割減と大幅に落ち込んでいるホテルも。町商工会(熊谷威二会長)は「このままでは各事業所の経営が立ち行かなくなる」と危機感を抱き、白老観光協会(福田茂穂会長)との連名で町に支援策を求める緊急の要望書を出した。
「来店客が1日に数組という日もある。こんな状況では店を続けることができない」。町内で居酒屋を営む男性は、新型ウイルスの影響に表情を曇らせた。
道内で感染が広がり始めた2月以降、客足が鈍くなり、道知事の緊急事態宣言に伴う自粛ムードが追い打ちを掛けた。送別会など宴会の予約キャンセルも続々と入り、深刻な状況に陥っている。男性は「宴会が多い3月は本来ならば稼ぎ時。でも、客がいなくて、早く営業を終えざる得ない日もある」と頭を抱えた。
影響は宿泊、飲食、運輸、建設、食品製造などさまざまな業種に広がっている。町商工会は北海道商工会連合会の要請に基づき、今月7日、会員事業所の実態調査を開始。事業所からは苦悩の声が続々と寄せられている。
町商工会によると、観光客の減少で宿泊施設の利用客が大幅に落ち込み、前年同時期の8割減となったホテルもある。飲食店の中には、4月にかけて予約がキャンセルとなり、パート従業員を休ませる措置を取った店も。建設業では、中国の工場停止などによって、トイレやエアコンなど住宅設備メーカーの商品供給が滞り、工事ができないケースも出ているという。ガソリンスタンドは、行動の自粛ムードで車の給油需要が減った。
さらに、イベント中止や臨時休校に伴う給食停止などで食品業者が苦境を強いられ、飲食店からの受注減で割り箸業者も影響を受けるなど、地域経済へのダメージが顕在化している。
町商工会はこうした状況を踏まえて9日付で、観光協会との連名で町と町議会に要望書を提出。▽金融対策の返済猶予、雇用対策の雇用調整助成金の弾力運用などを国に要望すること▽借入金利や信用保証料の負担など白老町による支援策を実施すること―を求めた。
資金繰りが悪化する事業者が出かねない情勢から、白老金融協会を構成する苫小牧信金、室蘭信金、北海道銀行の地元3行に対しても融資条件緩和など支援を要請した。
町商工会の熊谷会長は「地元事業者の経営はどこもかなり厳しい状況だ。感染拡大がいつ終息するか見通せない中で不安も広がっている」とし、「地元金融機関は気軽に相談を―と言っており、まずは利用してほしい」と話す。
事態を受けて札幌市は、資金調達の円滑化に向けた支援制度を創設し、借り入れに伴う信用保証料の半額以内を補給。北見市も地元金融協会に返済猶予や低金利融資を求める要望書を出すなど、自治体による事業者救済の動きが出てきている。鈴木直道知事も11日の道議会代表質問で、企業の事業継続や雇用安定に取り組む方針を示した。
要望書を受けた白老町は「国の経済対策の動きを注視しつつ、利子補給など町独自の支援策を打ち出せるか検討したい」としている。