新型コロナウイルスの影響で、道内外で予定されていたアイヌ文化復興拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)のPRイベントが続々と中止に追い込まれている。地元白老町や道などは、年間100万人目標のウポポイ来館者の受け入れに向けたJR白老駅周辺施設整備の完了と供用開始を祝うため、14日に計画していた記念式典の中止も決めた。感染拡大が終息する見通しが一向に立たない中、50日後に迫ったウポポイ開業を危ぶむ声も地元から上がる。
「ウポポイは4月24日に予定通りオープンできるのだろうか」。新型ウイルス感染者が増え続けている事態を踏まえ、白老町民からこうした心配の声が広がっている。ウポポイは国内外からの来館者受け入れを想定した国立施設。感染が国内のみならず、世界規模で拡大している中で、「ウイルス拡散防止の観点からも、終息するまで開業が見送られるのではないか」と懸念する町民は少なくない。
影響は既に出ている。公益財団法人アイヌ民族文化財団(札幌市)は感染拡大を受け、ウポポイPRを兼ねて2月29日に東京で予定していた「アイヌ文化フェスティバル」を中止。札幌市は今月1日の「ウポポイオープン直前イベント・地球のまつり さっぽろイランカラプテ音楽祭」を取りやめた。東京都は7、8両日に都内で計画していた「アイヌ伝統文化展」の開催をやめるなど、ウポポイ開業を前にアイヌ文化への関心を高めてもらうイベントの中止が相次いでいる。
白老町は3日、共催の道やJR北海道との協議で、白老駅周辺施設整備の完了や供用開始を祝う14日の記念式典中止を決定した。この日の行事では、特急「北斗」初停車の歓迎セレモニーや駅併設自由通路の渡り初め、リニューアルした駅舎や駅前広場などの見学、記念式典といった内容を企画し、地元関係者や各地の自治体首長、工事関係者ら240人を招く予定だったが、「感染拡大の現状を鑑みて中止を決めた」と町の担当者は言う。町は式典参加予定者に中止を伝えるはがきを発送するなど対応に追われた。
白老では4月1日の駅北観光商業ゾーン(ポロトミンタラ)・観光インフォメーションセンターのオープン、同18日の政府主催ウポポイ開園記念式典、ウポポイ開業に合わせて町がポロトミンタラで展開する地元観光振興のロングランイベントも計画されているが、町の担当者は「インフォメーションセンターのオープンやロングランイベントを計画通り実施できるかどうか。ウポポイ開業に対する国の判断を注視し、今後の様子も見ながら早期に決めたい」とし、終息の見通しが付かない状況に頭を悩ませる。
戸田安彦町長は、ウポポイを生かしたまちづくりに水を差す事態に表情を曇らせつつ、「今のところ開業日の変更といった情報は入っておらず、国や道、関係団体と情報交換しながら4月の開業に向けた準備を進めていく」と話す。