新型コロナウイルスの感染拡大を受け、白老町内の高齢者施設も厳戒態勢を敷いている。施設内へのウイルス侵入は、重症化リスクがある高齢者の集団感染を引き起こしかねないからだ。各施設は入居者との面会を制限したり、業者からの物品の受け取り場所を限定したりと、外部との接触を可能な限り避ける自衛策を強めている。
介護度の高い高齢者52人が入居する町立特別養護老人ホーム寿幸園は2月25日から、入居者との面会を家族を含めて原則禁止にした。業者が物品納入で施設内に入る場合、検温を義務付け。職員は施設内の手すりやドアノブのアルコール消毒を繰り返すなど対策に神経をとがらしている。
施設側の厳重な対策は、高齢者が罹患(りかん)すると重症になるリスクがある上、施設内へウイルスの侵入を許せば一気に広がる恐れがあるからだ。寿幸園は「できる限りの措置を講じて感染を防ぎたい」と気を引き締める。
介護付き有料老人ホームやグループホームなどを集約した医療法人社団玄洋会グループ・白老高齢者複合施設も自衛を強めている。入居者の外出や家族など外部の人との面会を制限。施設内で入居者の誕生日を祝うイベントなどは取りやめ、ボランティアの受け入れも中止した。宅配便など荷物の受け渡しは玄関の事務所窓口で行うなど、業者が居室に立ち入らないようにした。田代佳充施設長は道内で感染者が相次ぐ事態に危機感を抱き、「ウイルスが入り込まないよう警戒していきたい」と話す。
70人が入居する軽費老人ホーム恵和園エルテルハイムは、他の施設に先駆けて2月17日から厳戒態勢を敷いた。面会、外出の制限のみならず、集団感染を避けるため、花札や手芸、園内喫茶といった施設内での催しもすべて延期。職員は出勤時、体温を測って体調を確認し、ウイルスを施設に持ち込まないよう気を配る。
町内で複数の高齢者・障害者施設を展開する社会福祉法人天寿会も面会を制限。出入り業者が検温で37度以上あれば、施設への立ち入りを断る措置を取っている。各施設の行事も中止した。有効な治療法がない新型肺炎を引き起こす未知のウイルスにおびえ、「早く終息してほしい」と願うばかりだ。
町内の施設で新型ウイルスへの不安が広がる中、町高齢者介護課は「必要な対策を講じてもらうため、国や道からの情報が入ればすぐに周知していきたい」と言う。