むかわ町教育委員会の学芸員田代雄介さん(40)がこのほど、アイヌ民族のチャシ(とりで)跡についてまとめた冊子「北海道鵡川流域のチャシ跡群」を自費出版した。町内にある17カ所のチャシ跡の規模や構造などを詳細に紹介。「ある程度の知識があれば誰でも読めるよう一般向けに書いた。興味がある人に読んでもらえたら」とアピールする。
チャシは近世にアイヌ民族が築造した施設で、アイヌ語で「囲い」や「とりで」などを意味する。自然地形を利用し、堀や土を盛り上げて構築されているのが特徴だ。
田代さんは2013年にむかわ町教委の学芸員に着任後、チャシに関するリポートが20年ほどなかったことを踏まえ、「自分で書いてみよう」と14年から本格的に調査を開始。地形図や空撮写真を頼りに自ら山へ足を運んだほか、十勝管内浦幌町や新ひだか町、白老町にも出向いてチャシ跡が保存されている場所を見学して回った。調査、執筆合わせて5年ほどかけて大作を完成させた。
冊子はA4判98ページ。穂別豊田などの4カ所と、既に穂別地区を中心に発見されている13カ所のチャシ跡も含め、現地の様子を撮影した写真と共にまとめ、「鵡川流域考古学研究会」名義で今月2日に100部を刊行した。冊子は穂別図書館と道の駅「四季の館」内にあるまなびランド図書室で閲覧できる。
田代さんはこのほか、札幌市中央図書館をはじめ、網走市、北見市、函館市など道内各地の図書館や国立国会図書館(東京)にも寄贈しており、「これをきっかけに札幌や十勝管内の郷土史研究家、アマチュアの研究家たちとつながりを持ち、交流できれば」と波及効果を期待。「さらに調査、研究を進めて続編も展開できればいいですね」と話す。