2019年は日韓関係の悪化で韓国からの観光客は減ったが、他の国からの訪日客が増えており、訪日外国人客全体では大きな落ち込みになっていない。ただし、最近は札幌のホテル建設が進み、民泊の受け入れ環境も軌道に乗ってきたため、苫小牧の個々のホテル、旅館の客室稼働率は下がってきた印象がある。特に同10月から消費税率が8%から10%に上がった影響もあったのか、秋頃はどのホテルも厳しい結果だった。
ホテル、旅館の魅力を高めようと、各ホテルはいろんな努力をしていると思う。当ホテルの場合、雑誌やインターネットの宿泊予約サイトなどの顧客満足度を一つの指標にしている。
建物を改装すると、満足度が上がる傾向にあるが、お金も掛かるので、そんなにたびたびはできない。しかし、おもてなしの工夫はできる。お客さまの声を聞き、コストがそれほど掛からないなら即対応する。最近ではスマホの充電用コンセント、延長コードなどを用意するようにした。
また、お客さまのアンケートには、スタッフについて書かれることが多い。「フロントの人の感じがよかった」「食堂のおばちゃんが生き生きと働いていた」などと好感を持ち、「また泊まりたい」と言っていただくことがある。お客さまの感想はスタッフにも伝えるので、一人ひとりのやりがいになっていると思う。スタッフが誇りを持って働ける職場づくりは、経営者の務めだ。一生懸命に働くスタッフのおかげで、お客さまの満足度も上がっていく。
今、道が導入を検討している宿泊税に対し、ホテル業界で反対している理由の一つには、宿泊の目的が観光に限らないからだ。合宿やスポーツ大会に参加する人たちをはじめ、受験や親の介護、入院の付き添い、仕事などで利用する人もいる。宿泊者から一律で税金を取るとしたら、配慮が足りないと思う。
苫小牧市主導で各種競技合宿で苫小牧に宿泊した団体や学校などに、一定の条件を設けて宿泊費の一部を補助する制度を始め、リピーターが増えている。この他に、無料の野外音楽ライブやコスプレフェスタ、ハンドメードの大規模イベントなど、若い人たちが中心になって新たな文化を築いており、ホテル業界も恩恵を受けている。今後、こうした動きに協力していくことも考えたい。
年明けからは、宿泊予約も回復基調にある。白老町で4月24日に開業する民族共生象徴空間(ウポポイ)への期待は大きい。波及効果を高めるため、東胆振全体で盛り上げていくことも大事だと思う。
1971年に苫小牧市元中野町に創業した佐保姫旅館が前身。84年に現在地の旅館の権利を取得し、98年に有限会社化。客室35室、従業員25人。同市表町4の2の4。