昨年は苫小牧工場で約8割を占める新聞用紙の生産量が2018年対比で7%落ち込んだ。これは全国とほぼ同じ傾向。新聞業界が依然として厳しく、最近は部数の減少に加え、新聞自体のページ数も少なくなり、影響が大きい。
製紙業界としては段ボールなど板紙、コピー紙などの情報用紙はそんなに減っていない。雑誌やコミック、通販のカタログなど印刷媒体の落ち込みは激しく、苫小牧工場の生産量は全国平均より減少幅が大きかった。当工場は出版向けの紙のバリエーションが豊富で本のデザイナーが好んで使ってくれているほどだが、出版業界全体で話題作が少なく厳しかった。
しかし、損益ベースではむしろ、18年に比べて改善している。原料の約6割に上る新聞古紙の価格は18年に中国市場の影響で高騰していたが、19年5月から中国が古紙の輸入を規制したため、本来の価格水準に戻り、前年よりコストが下がり、収益を押し上げた格好だ。
昨年発表になったが、当工場は新規分野に挑戦することになる。新聞を造っていた抄紙機N―5号マシン1台を今年上期にも停止。成長分野である段ボール原紙とクラフト紙を生産するマシンに改修し、21年度から稼働させる。
また、王子マテリア名寄工場にある特殊板紙などを製造する2号マシンを移設して、22年4月から稼働させる。当工場では全く造っていなかった分野で、現在は工場の視察や関係者から話を聞くなど情報収集しながら、準備作業を進めている。当工場の今の従業員だけでは対応できないので、経験者を受け入れていくことになると思う。
AI(人工知能)などの新たなテクノロジーの活用も模索しており、RPA(ロボットによる業務自動化)の研究を始め、導入企業への聞き取りもしている。高所作業の際にドローン(小型無人機)を取り入れ、作業時に足場を組む必要がなくなり、コストが大幅に抑えられた。
働き方改革にも取り組み、日勤職場では年間の労働時間を決めて、会議を基本30分とし、定時退社日を設けた。管理職も半日年休やフレックスタイムを月1回以上使うよう促し、効果がかなり出ている。今まで通りのやり方では難しく、考え方を変えて割り切ることも大事。一度やめた上で不具合の有無を見極め、必要があれば戻せばよい。
脱プラスチックで紙製品が見直される動きはあるが、製紙業界全体の厳しい状況は今後も変わらず、生産体制の集約化が進む。紙以外でセルロースなど新規分野の重要性も増していくだろう。
苫小牧工場は1910年に操業開始。世界屈指の製紙工場で、新聞用紙を中心に生産している。従業員数は約600人。苫小牧市王子町2の1の1。