(3)災害時の支援拠点に 株式会社苫東伊藤邦宏社長

  • 挑む経済人 2020企業トップに聞く, 特集
  • 2020年1月9日

  昨年は胆振東部地震からの復旧が大きな課題だった。2018年9月の地震により、苫小牧東部地域の臨海部で上下水道管が断裂するなど被害が出て、苫小牧港・東港の専用埠頭(ふとう)で液状化も発生した。上下水道は昨年11月に復旧したが、埠頭はまだ仮の状態で完全復旧は来年度に先送り。正確な数字ではないが、被害総額は10億円弱。早期に発注し、雪が降るまでに終えたい。積み立てた内部資金も取り崩しており、昨年6月の株主配当も1株当たり600円を100円に抑えざるを得なかった。

   一方であれだけの大きな地震があっても港の機能は正常に維持され、自衛隊や国土交通省の船舶が周文埠頭に入って物資や人員を運び、災害に対する強さを確認できた。

   昨年8月に苫東開発は満20年を迎えたが、国交省北海道局が示した第3期の苫東開発新計画の進め方でも、災害時の支援拠点として苫東を活用する内容が盛り込まれた。道内で発生した大規模災害への対応もあるが、首都直下型地震など道外で災害が発生した時に苫東の広大な土地や港の機能を活用する国の施策なので注目している。

   新規の分譲立地は最近ないが、「業務拡大に伴って隣地を購入したい」などの依頼が多い。最近ではリサイクル企業2社で工場の新設、拡張があり、昨年は自動車関連の新工場も着工した。年度末までまだ時間があるので、これから仕上がる案件もあると思う。苫東は自動車を中心とした機械工業、金属加工をメインに立地が進み、その傾向は今も続いているが、この5年間は範囲が広がっている。

   特に食品、物流、エネルギーの展開が苫東内で多くなってきている。広い土地が確保でき、物流の動線を伸ばしやすい点が評価されている。従来の自動車産業などは製品を道外本社に送る港の物流が中心だったが、最近は高速道路も整備されたことで、道内の拠点施設として苫東を選んで、立地していただくケースがある。全道に広がる物流ネットワークの中核は苫東としての特性で、今後もアピールしていきたい。

   4月には苫小牧埠頭の大型冷凍冷蔵倉庫も稼動する。現時点で具体的な話はないが、臨海部はもちろん、柏原でもいろんなオペレーション、事業を展開したいという企業が出てくると期待している。情報があれば積極的に動いていきたい。新千歳空港の空港民営化は、物流の面に限れば効果はあまり期待していないが、人の流れが活性化することが大きな要素。新幹線との相乗効果もあるかもしれないので注目していきたい。

   1万700ヘクタールに及ぶ国内最大の産業地域、苫小牧東部地域で土地の造成や分譲、賃貸、管理を行う第3セクター。国、道、苫小牧市などが出資している。苫小牧市柏原211の1。

過去30日間の紙面が閲覧可能です。