スポーツ回顧 【中】―アイスホッケー激動の1年

  • アイスホッケー, スポーツ
  • 2019年12月27日
王子とひがし北海道。ライバル同士がアイスホッケー界を盛り上げる

 白熱した戦いが続いているアイスホッケー・アジアリーグ2019―20シーズン。今季はチームの入れ替わりなどもあり、リーグとしても新たな船出となった。競技に関わる人や王子イーグルスの本拠地である苫小牧など「アイスホッケータウン」に住む者にとって大きな意味を持つ一年だったかもしれない。

 昨年暮れに明らかになった「日本製紙クレインズ」の解散の一報。氷都釧路はもちろん日本のアイスホッケー界に衝撃が走った。クレインズのファンはもとよりホッケーファンが、インターネット交流サイト(SNS)を活用したり横断幕を掲げてチームの存続を強く呼び掛けた。

 そんな中で開かれた今年2月の釧路国体。各会場に有志たちが集い、釧路にアイスホッケーチームを残すことを求める署名運動を展開した。競技を超えてさまざまな人が名前をしたためた。現地で本紙の取材に応じた釧路市民からは「何とか残ってほしい」「アイスホッケー界にとっても非常に痛手」など悲痛な思いや懸念の声。有志は3月末までに目標の10万人を超える署名を集め釧路商工会議所に提出した。

 選手も行動に出た。スポンサー探しに奔走し、チーム存続に向けた資金なども集めた。経済界の協力とファンや選手の思いがかなって6月、新生「ひがし北海道クレインズ」が正式に誕生。王子イーグルスのライバルチームはアジアリーグで現在、プレーオフ出場枠の争いに絡んでいる。

 地元釧路の記者仲間や関係者の話によると、クレインズには子どもや女性など新しいファンが増え、ユニホームを着て応援する市民らの姿も多く見られるという。クレインズの新生チームがアイスホッケー界に新風を吹き込む。

 そして日本アイスホッケーの雄・王子イーグルスは今季、菅原宣宏新監督をはじめ多くのスタッフや選手らが新たになるなど「血の入れ替え」を決行した。シーズン当初から掲げた「意識改革」が功を奏し、レギュラーリーグでは昨年より上位の3位につける。指揮官や選手たちも「まだ優勝は諦めない」と話しており、ファンに感動を与える試合を多く見せてほしい。

 ラグビーの次は俺たちアイスホッケーがスポーツを盛り上げる―競技関係者の強い思いだ。王子とひがし北海道の2チームが先頭に立って日本のアイスホッケー界を盛り立てる―。リンクで笑顔あふれるファンの姿が多く見られることを願う。(工藤航)

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