東京都西東京市のダイドードリンコアイスアリーナで開かれた第87回全日本アイスホッケー選手権大会は8日、3日間の熱戦に幕を閉じた。シーズン当初から、23年ぶりとなる連覇を目標に掲げて並々ならぬ思いで臨んだ王子イーグルスは3位にとどまった。アジアリーグの戦いでは好調が続いているだけに、改めて一発勝負の難しさを痛感させられた格好。全日本で見つかった収穫と課題を探る。
今大会の優勝候補筆頭とみられていた王子。直近の同リーグ、アウェーのサハリン戦こそ1勝2敗で終わったものの、それまでは堅い守りと人数的有利不利が生まれるスペシャルプレーの精度向上などもあり、好調を維持してきた。
しかし全日本選手権は様子は違った。初戦の中央大戦、スコアは5―1の快勝とはいえ、5対3と人数で優位に立つパワープレーの場面でパスは通らず、得点を決めることができないなど、内容的に課題が残った。
修正して臨みたかった準決勝の東北フリーブレイズ戦だが、8度あったパワープレーで得点を決めたのは1度のみ。リーグ断トツ1位の成功率34・38%の力を発揮し切れなかった。東北はアジアリーグ最下位ながら確実に上り調子。ハンドリングやシュートの精度なども上がっていた。きわどいノーゴール判定など運も味方に付け、延長の末に執念で王子を破った。
FW高橋聖二は「うちらしく守りを切り替えることができなかった。チャンスもたくさんあったが決め切れなかった」と反省の弁を述べた。
悔しい気持ちを宿敵ひがし北海道クレインズにぶつけた3位決定戦。チームを率いる菅原宣宏監督は「今後のチームに勢いを付けるためにも流れを作らないといけない」と第2セット以降のメンバーを変えて試合に挑んだ。初の全日本出場となったFW柴田嗣斗ら若手の活躍はもちろん、「チームリーダーとして主体性を持ってやってくれている」と指揮官が信頼を置くFW高橋、FW中島彰吾らが良い動きを見せた。中島は「相手がどこであれ、シンプルなプレーで戦っていく」と今後へ意気込みを語った。
アジアリーグのレギュラーシーズンは約3分の2を消化。王子は21、22両日に全日本と同じリンクで行われる東北戦で全日本の雪辱を果たし、今後の厳しい戦いを勝ち抜くための糧にしたい。
一方、社会人の代表枠で参戦したダイナックスは初戦、今大会で栄冠を勝ち取った栃木日光アイスバックスに敗れはしたものの、格上を相手に素早い攻撃からの先制点など見どころをつくり、会場を大いに沸かせた。これまで数週間連続して試合をこなしていたタフな状況の中で、最後の最後まで諦めない姿勢を見せたのは印象的。
「いろいろなことにチャレンジできたし、勉強になることも多かった」と大澤洋介監督。続開中のJアイスノースディビジョンや来年3月の全日本選手権(B)など試合は目白押し。チームとして来季もまたこの大舞台に戻り、悲願の1勝をつかむことを誓いリンクを後にした。
(工藤航)