「投手の障害予防に関する有識者会議」が5日、最終答申をまとめ、注目が集まっていた投球数制限は1週間で500球以内となった。室蘭支部の高校野球指導者は早くから対応に動いている一方、野球関係者からは賛否の声が上がった。
駒大苫小牧高の佐々木孝介監督は、投球制限の機運が高まった数年前から、登板機会
が増える可能性の高くなる投手陣に奮起を促してきた。「目の色が変わった。選手たちはすでに順応している」と話す。
「1人で投げさせる美学が、1人の人間を壊す可能性もある」とし、日々の練習から選手たちの体をケアしていくのはもちろん、今後はX線撮影なども活用してより個々人の身体状況を細かくチェックしていく構えだ。
9月の秋季大会で登録12人と厳しい台所事情ながら奮闘を見せた浦河。投手出身の阿部健太監督は、酷使により右肩を手術した自身の経験を基に、1学年で複数の投手を育成する方針を取っている。練習時から投球数を申告させるなど、「選手が無理し過ぎないように」コミュニケーションを密にすることも欠かさない。「今後も育てる力を付けていきたい」と前向きだ。
一方で、長く道内野球界をけん引してきた名将の意見は分かれた。
「投球制限はナンセンス」と厳しい言葉を口にするのは、鵡川高野球部で部長を務めるなどした小池啓之さん(67)。投球過多の現状よりも、小中学年代から下半身主導の肩や肘に負担が掛からない投球動作の指導構築が第一義と説く。
併せて「特に公立校は投手繰りが大変になる。戦力豊富な私立との差がさらに広がってしまう」と指摘した。
反対に苫小牧工業高を春夏4回甲子園に導いた金子満夫さん(81)は、他のスポーツと比べて肩や肘への負担が大きい競技性を挙げ、「平等にルール化されるのであれば、いいことではないか。けがや後遺症防止につながる」と話す。
近年は「次から次へといい投手が出てくるチームが多い。エースが先発しないのもよくある」。ルール化することで、複数投手育成の必要性が浸透していくことを期待した。