太宰と苫小牧

  • ニュース, 夕刊時評
  • 2019年9月24日

 文学は苦手だ。だから太宰治(1909―48年)も中高生の時に感想文の課題などで数冊読んだが、途中で閉じたものもある。

 今年は太宰の生誕110年。精神性の高い理想と真逆のものとを文章と人生に映した作家と思っている。彼の小説で苫小牧がほんの数行書かれていると知ったのは記者になってからだ。

 作品は39(昭和14)年に発表された「女生徒」。女学生の独白形式の短編。自宅の井戸端の「大きな魚」に「北海もの」の感じがし、「北海道の夏の臭い」「苫小牧のお姉さん」を思い出す。嫁いだ姉の家は「海岸に近いゆえか、始終お魚の臭いがして」「がらんと広いお台所で、夕方ひとり、白い女らしい手で、上手にお魚をお料理していた様子も、はっきり浮かぶ」。焦がれていた姉への甘えの思いと幼子を育てている姉との距離感への戸惑い、寂しさ、懐かしさ。揺れ幅の大きい若い感情をほとばしるように鮮やかに表現する。

 独白の主体は東京の人。なぜ姉が苫小牧なのか。港がまだない時代。漁家は砂浜に船を揚げた。太宰が苫小牧に来た話は知らない。

 「女生徒」は素材がある。有明淑という女学生が創作の材料にと日記を太宰に送っていた。2000年に日記が資料として復刻公開されている。幾つか図書館に問い合わせたが、手に入らなかった。有明淑の日記に苫小牧に関する記述があれば―と興味が湧く。調べていずれ続きを書きたい。(司)

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