冬の天気を理解するために重要なことは「風向き」と「地形」です。入社後、冬が訪れる前に重点的に研修が行われ、それらを理解することで、ようやく北海道の冬の天気の全体像が見えてくるようになります。 大ざっぱな説明になりますが、冬型の気圧配置の時、寒気の影響で日本海の海上で発生した雪雲が、山を越えるか越えないかで、雪が降るか降らないかが決まる、ということになります。苫小牧に関しては、西から北西の方角に、余市岳や札幌岳といった、標高がやや高めの山があり、この辺りの地形が、雪雲をブロックする役目を担っていると考えられます。 気象庁のホームページ(HP)で雪雲のレーダーを見ながら、国土地理院のHPの地形と山の標高などを眺めていると、雪雲が特定の地形で遮られるのが顕著に分かり面白いです。雪が降っているときはぜひ眺めてみてください。気象予報士試験の中で、このようなことは出題されなかったと記憶していますが、「こういう面白いことを、試験勉強の中で教えてよ」と研修当時は思ったものです。 冬の天気の全体像が見えても、雪の降る時間をピンポイントで当てるのは至難の業です。寒気の影響で発生した雪雲は、風に乗って次々に流れ込み、雪が断続的に降るためです。 北海道のテレビでは、各地の3時間ごとの天気予報を放送しているのが一般的ですが、時間ごとの天気予報を社内では「時系列」と呼んでいます。この時系列の天気で、雪マークが付いていても、「この3時間の間、ずっと降っている、という感じではない」というときが冬の間は割と頻繁にあります。そういったときは、「断続的に雪が降る」「雪が降りやすい」など、あえて「いつ降る」をコメントしないようにしています。逆に、雪の降る主な原因が気圧の谷で、雪の降り始めと降り終わりの確度が高めの時は「昼前に雪が降る」と、断定的にコメントするなど、言葉の選び方を実は変えたりしています。 また、昼前が雪、昼すぎが曇り、夕方が雪、といった予報の時も同様に、「断続的に雪が降る」ということが多いです。これも理由は同様で「昼すぎの3時間だけピタッとやむ」ということの方が、私の体感としてはまれであると考えるためです。 では、「昼すぎにも雪の予報にすればいいのでは?」という声が聞こえてきそうなのですが、そう単純にはいかない複雑な事情があるのです。(続く) (気象予報士)