早朝の薄暗い窓の外を、雪が南風にあおられて飛んでいく。昨日の道東や十勝の雪嵐を「テレビ鑑賞」していたことを改めて反省する。申し訳ないと思いながらも、実は心の中で、自分たちの選んだ土地の雪の少なさ、春の訪れの早さを喜んでいたのだ。昨夜、布団に入る時、風のざわめきを感じながら「もしや」と、一瞬は考えたものの、まさかこれほどの雪嵐の朝になるとは。「北海道から九州まで」という低気圧の大暴れに、きょうも朝からテレビ画面の雪を見る時間が長い。心を込めて被災地に同情したい。
この数日、アイヌ文化の保存や研究、伝承活動を続け、2006年春に亡くなった平取町二風谷の萱野茂さんの笑顔を思い出していた。早いもので、萱野さんが亡くなって、来年は二十年になる。いつも、春に思い出すのは著作にもあった「ニ(木の)トペ(乳汁)」の話だ。
山の子どもたちはこの季節。イタヤカエデの皮に切れ目を入れるのこぎりと、樹液を入れる瓶を用意して山へ行った。たまった樹液は持ち帰って鍋に入れて沸かして煮詰め、甘いおやつにした。子どもたちは山菜の葉や茎の色や形の見分け方だけでなく、イタヤの皮の色や根の周りのコケの見分け方も覚えなければならない、学習の春の始まりだった。(水)