国が二酸化炭素(C O2 )を分離、回収、貯留する技術「CCS」の事業化を目指し、苫小牧沖を全国でも初めて特定区域に指定する方針を固めたことが、6日までに関係者への取材で明らかになった。「CCS事業法」に基づく試掘に向けて、事業者を公募・選定して試掘の許可を与える計画で、今月中にも正式決定する見通しだ。
国は民間事業者がCCSを事業化するための環境を整備するため、二酸化炭素の貯留事業に関する法律「CCS事業法」を昨年5月に成立させた。この中で特定区域に指定する要件として、C O2 を貯留できる層があるか、または存在する可能性があるかを最重視。その要件として▽貯留構造▽遮蔽(しゃへい)構造▽地質環境の安定性―の三つについて、有識者からの意見も踏まえて判断するとしている。
苫小牧では国の大規模プロジェクトとして、2012年度からCCS実証試験を展開。事業を受託する日本CCS調査(東京)が19年、海底の地層にC O2 を目標通り30万トン貯留し、安全かつ安心に実用化できると結論付けた実積がある。現在はCCSに有効利用の「U」を加えた国のCCUS拠点化実証で、世界初の液化C O2 船舶長距離輸送も行われている。
さらに国はCCS事業化に向け、23年度に国内外7地域を、今年度は国内外9地域をCCS支援事業に選んでおり、いずれも道内からは出光興産(東京)、北海道電力(札幌)、石油資源開発(東京)=JAPEX=が苫小牧地域で計画する事業が唯一選定されていた。苫小牧地域ではC O2 の年間貯留量を約150万トンと見込んでいる。
今月中にも苫小牧が全国でも先駆けて、特定区域に指定されることが正式決定する見通し。その後は事業者を公募した上、技術面で有識者からも助言を聞いた上、試掘者を選んで許可を与える流れ。30年のCCS事業開始を目指し、26年ごろにも最終投資決定される計画で、苫小牧沖ではC O2 貯留に適した地層かを確認するための試掘を進めることになる。