ウナギ

  • 夕刊時評, 組版
  • 2025年2月11日

 絶滅危惧種のニホンウナギの稚魚が胆振日高の河川で増えているという。思わずまさかと口走るようなニュース。時事通信社から配信を受けて掲載した1月9日付の本紙記事だ。北大、東大、海洋研究開発機構の研究チームが発表した。

 ウナギの産卵場はマリアナ諸島の西方海域といわれる。ふ化した幼魚は黒潮などに乗って台湾、中国、日本沿岸に到達し、川に遡上(そじょう)して成魚へと育つ。チームは2021年4~7月に胆振の河川を調査し、稚魚のシラスウナギを確認した。海流データを基に稚魚の動きをシミュレーションし、03年までの10年間と23年までの10年間の推計を比べて本道太平洋岸に到達した稚魚が増えたと推定した。地球温暖化の影響で黒潮の北上が影響しているとの見立てだ。

 ただし増えているといっても数は多くないという。すぐに天然資源の増加に結び付くレベルではないよう。遠い将来、産地化して地域ブランドになればと夢を描きたいが、要因に温暖化と黒潮の北上があるならいいことばかりとも言えない。低水温を好むサケの回帰はさらに困難になるだろうし、魚種交代や固有種の減少にもつながるかもしれない。地域産業が変化にどう対応するのかは難問だ。今後の研究に注目したい。(司)

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